fbpx

世界が日本の「スポーツ関連株」に熱視線。ミズノ、アシックスは今が買いか?長期投資家が持つべき視点=元村浩之

2026年は、冬のオリンピック、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、そしてサッカーワールドカップと、世界的なスポーツイベントが目白押しです。足元ではこれらのイベントへの期待からスポーツ関連銘柄が上昇を見せており、個人投資家の間でも「さらなる業績や株価の伸び」を期待する声が高まっています。

しかし、スポーツ用品業界には、「イベントが起きたからといってすぐに売上が跳ね上がるわけではない」という独特のメカニズムが存在します。今回は、元スポーツ小売店店長の現場感覚を持つ専門家の視点を交え、主要企業の現状と将来性を詳細に解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

スポーツ関連銘柄の基本分類と「業績反映」のラグ

スポーツ関連銘柄を理解するためには、まずその立ち位置を分類する必要があります。

業界は大きく分けて、アシックスやミズノのような「用品メーカー」、デサントやゴールドウインに代表される「アパレルメーカー」、それらを繋ぐ「卸(問屋)」、そして一般消費者が直接目にする「小売(ショップ)」という4つのカテゴリーで構成されています。

投資家が最も気になる「スポーツイヤー」の恩恵がいつ業績に現れるかという点について、結論から言えば、大きな大会が開かれてもその影響が直ちに数字として表れることは稀です。例えばWBCで日本が優勝した翌日に、いきなり野球人口が激増してバットやグローブが完売し続けるといった現象は起きにくいのが現実です。

このメカニズムを解く鍵は「競技人口の増減」にあります。日本の場合、競技人口が大きく変動するのは主に>4月の新学期であり、中学生や高校生が「どの部活動に入るか」を決めるタイミングで最大の需要が発生します。
したがって、3月に開催されるWBCの影響はその年の>4月の需要に反映される可能性がありますが、冬の大会などの影響は翌年4月以降までずれ込む傾向にあります。

短期的なテーマ投資として熱狂するのではなく、大会を通じて「競技者の裾野がどれだけ広がるか」を見極めることが、中長期的な投資判断において極めて重要となります。

アシックス<7732>:シューズ特化戦略でV字回復した覇者

日本を代表するメーカーであるアシックスは、現在、非常に強力な成長フェーズに突入しています。同社の事業構造における最大の特徴は、全社売上の約8割をシューズが占めている点にあります。競合のナイキがアパレルやエキップメントでも多額の利益を上げているのに対し、アシックスは徹底した「シューズ至上主義」の構成を貫いています。

2026-01-27-12.56E381AEE794BBE5838F.jpg

出典:マネックス証券

このアシックスが成し遂げた驚異のV字回復には、明確な理由があります。

2020年頃にはコロナ禍の影響やブランド力の低下により赤字に転落し、店頭では在庫処分として50〜60%引きで叩き売りされるような苦しい時期がありました。当時、市場を席巻していたナイキの厚底シューズにシェアを奪われていた同社ですが、自社の技術力を武器に厚底のハイエンドモデルを開発し、反転攻勢に出ました。その結果、かつてナイキ一色だった箱根駅伝の足元は、現在ではアシックスやアディダスが大きく巻き返すまでに回復しています。

また、マクロ環境の変化も味方にしています。

インフレの恩恵もあり、4〜5年前には1万5,000円程度だったレーシングシューズが、現在では3万円から4万円という高価格帯でも飛ぶように売れており、定価が約3割上がったことで利益率が劇的に改善しました。この成長は日本国内に留まらず、欧州、米州、そして中国を含むアジア全域でブランド認知が高まっており、世界中のあらゆる地域で業績を伸ばしています。

さらに、カジュアル路線の「オニツカタイガー」が爆発的な人気を博していることも見逃せません。大阪や銀座といった一等地ではインバウンド観光客がショップに押し寄せ、まさに「爆買い」していく光景が日常化しています。

ただし、投資判断においては注意点もあります。現在の株価は大きく上昇しており、PERは約31倍と決して割安とは言えない水準にあります。
また、アンタなどの中国メーカーによる品質向上が将来的な脅威として囁かれていますが、現時点では欧米市場において中国ブランドがアシックスの地位を脅かすまでには至っていません。

Next: ミズノ、ナイキは買いか?長期投資家が持つべき視点

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー