2026年2月28日の金曜日、米国とイスラエルがイランへの大規模攻撃に踏み切りました。まあやるやるとは噂されていましたが…。「号砲は買い」なんて相場の格言もありますが、その週末を挟んで迎えた3月2日の月曜日、日経平均は一時1,500円を超える急落。その後も3月4日には前日比2,033円安(-3.6%)と、史上5番目の下げ幅を記録しました(※編注:原稿執筆時点3月8日。週明け3月9日の東京株式市場では、日経平均株価が一時前週末比4,200円超の下げとなりました)。
SNSには「下がったら買い」だとか、「早く売らないとやばい」といった言葉が溢れかえっていました。今回は、この急落の背景を整理しつつ、過去の米国による軍事行動時に株価がどう動いたかを振り返り、最後に元トレーダーの僕だから話せる、初心者の方へ向けたアドバイスをお伝えしたいと思います。(『株式市場の潮流を射抜くプロの眼|INVESTLEADERS 公式メルマガ』かえるさん)
プロフィール:かえるさん
元外資系証券株式本部長マネジングディレクター。日系証券個人営業から証券人生をスタート。その後ロンドンと東京を拠点に20年以上に渡って外資系証券会社の主にトレーディングデスク及び各マネジメント職を歴任。2019年退職。得意分野はフローの裏側分析及び市場構造分析。現在はXやnoteなどで個人投資家向け株式投資の知識提供中心に悠々自適生活を送る。趣味は食とクルマ。
なぜ日本株はこんなに荒れているのか?
今回の急落の直接的な原因は明らかです。
米国とイスラエルがイランの首都テヘランを含む全土を空爆し、最高指導者ハメネイ師が死亡したと報じられました。イラン側もUAEやバーレーン、カタールにある米軍基地への報復攻撃を即座に実施。攻撃の応酬が始まったのです。
しかし、日本株がここまで大きく反応した理由は、単に「戦争が始まった」からだけではありません。
ここからは日本株下落の要因を整理します。
中東情勢悪化で原油価格が急騰
まず最大の要因は、ホルムズ海峡リスクの高まりと、原油価格の急騰です。
▼攻撃直後、NY原油先物は一時1バレル75ドルと前週末比で12%も上昇しました。

WTI原油CFD 日足 2025年9月25日~2026年3月7日 出典:TradingView
ホルムズ海峡は世界の石油貿易の要衝で、ここが封鎖されれば日量800万〜1,000万バレルの供給が物理的に途絶えます。
日本はエネルギーを輸入に頼っていますから、原油高は企業のコスト増に直結し、業績悪化懸念がダイレクトに株安に繋がるわけです。
指数は最高値圏でAI・半導体株への不安が浮上
▼日経平均株価は2月27日に5万8,850円で引けており、3日連続で最高値を更新していた直後でした。

日経平均株価 日足 2025年9月19日~2026年3月6日 出典:TradingView
高値圏にいた分だけ、利益確定売りが出やすい「エネルギー」が溜まっていました。
そこに地政学リスクという売り材料が加わり、ここぞと狙っていた投資家のポジション解消が一気に進んだということです。
また、エヌビディアが好決算を出したにもかかわらず株価が下落するという、いわゆる「Buy the news, Sell the fact(噂で買って事実で売る)」が攻撃前の週にすでに起きていました。
アドバンテストや東京エレクトロンも若干失速しており、投資家の心理的な耐性が弱まっていたタイミングだったことは重要です。
つまり、中東の地政学リスクだけでなく、原油・為替・AI半導体・高値警戒感という複数の不安が「合わせ技」になって、これだけの急落を引き起こしたというのが実態です。
過去の米国による攻撃時、株はどう動いたか?
地政学リスクは僕がトレーダー時代に何度も経験したもっとも経験が生かせるイベントでもあります。
結論から言えば、「有事で下がった株は、比較的早く反発する」というのが基本的な過去のパターンです。初めに書いた「号砲は買い」という格言はあながち間違ってはいないのです。
ただし、これを鵜呑みにしてはいけません。
確かに戦争は必ず終わるものの、タイミングや例外条件などは常に考えておく必要があります。
ここからは過去の米国(や同盟国)による攻撃のパターンを少し検証したいと思います。
<湾岸戦争(1990〜1991年)>
1990年8月にイラクがクウェートに侵攻した際、NYダウは1日で100ドル以上暴落し、その後10月中旬まで合計500ドル以上下落しました(S&P500ベースで約17%の下落)。しかし、1991年1月17日に多国籍軍が空爆を開始すると、株価は窓を開けて急上昇。戦争終結の2月末までに回復し、空爆開始から3ヶ月後にはS&P500が史上最高値を更新しています。

NYダウ平均 日足 1990年5月31日~1991年3月14日 出典:TradingView
<イラク戦争(2003年)>
イラク戦争も興味深いパターンです。開戦前の不確実性が高まる局面でS&P500は年初から約15%下落していましたが、2003年3月20日に実際に軍事行動が始まると、そこから反転上昇。NYダウ平均は開戦後1ヶ月で8.4%上昇しました。いわゆる「悪材料の出尽くし」です。

S&P500指数 日足 2002年11月29日~2026年3月8日 出典:TradingView
NYダウは11日後に底打ち。日経平均は為替の影響もあり底打ちまで39日かかりましたが、50日後には開戦前の水準を回復しています。
<ウクライナ侵攻(2022年)>
ロシアが侵攻した2月24日、NYダウは一時800ドル超の急落を記録しましたが、その日のうちに値を戻す荒い動きとなりました。しかし、エネルギー危機の長期化が意識された結果、6月中旬までダラダラと下げ続けました。

NYダウ平均 日足 2022年1月13日~8月24日 出典:TradingView
<2025年6月にイランへ攻撃した「12日間戦争」>
まだ記憶に新しいですね。2025年6月22日にイスラエルがイランの核施設を攻撃し、米国も参戦しました。このときも一時的にリスクオフが進みましたが、停戦合意が早く、株式市場はすぐに反転。上昇に向かいました。

S&P500指数 日足 2025年4月28日~7月3日 出典:TradingView
地政学リスクによる株価下落はいつ終わる?
過去の事例を見ると、株価が底を打って反転するきっかけには共通点があります。
- 「不確実性」が「既知のリスク」に変わったとき
- 原油価格がピークをつけたとき
- 停戦・和平のシグナルが出たとき
「戦争が起きるかもしれない」という恐怖が、「実際に始まった」に変わると、逆説的ですが市場は落ち着きを取り戻す傾向があります。イラク戦争はその典型でした。
湾岸戦争では、原油価格が1バレル40ドル超でピークをつけた時期と、株価の底がほぼ一致しています。原油がピークを打てば、「最悪のコスト増シナリオ」が後退するからです。
今回で言えば、3月5日にイランが「米国との対話の用意がある」というシグナルを出したことで米株が反発し、翌日の日経平均も1,032円高と大幅反発しました。ただ今回はまだ混とんとしておりイベントは続くと予想されます。
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