日経平均が過去最大規模の暴落からの急回復という展開で大混乱となっています。今日は注目を集める銀行株を取り上げます。多くの投資家が疑問に思っていることがあります。「日銀は金利を上げると言ったのに、なぜ銀行株は売られているの?」
銀行の基本的な儲けの仕組みは、企業や個人にお金を貸した際に得られる金利収入です(各種手数料収入もありますが)。その金利が上がるのだから、銀行株は株価が上がりそうです。しかし、24年8月5日は業種別指数で保険業と銀行業が17.%安と下落率のトップとなりました。
今回は、今株式市場で何が起きているのかを整理し、解説します。目先の株価動向に目が行きがちですが、5年10年の長期スパンで銀行株のことを考えるようなきっかけになれば幸いです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
現状整理:日銀の利上げと米国景気後退
まずは、今回の株価暴落が起こった原因を整理します。ことの発端は7月31日の日銀金融政策決定会合です。そこで、これまで0~0.1%としていた政策金利を0.25%に引き上げ8月1日から適用することが発表されました。
その理由は以下の通りです。
「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から乖離(かいり)した為替水準が続けば国民経済の健全な発展に影響が及ぶ。金融政策は経済・物価情勢の全体像をみて運営していく必要がある。最近のコストプッシュ圧力の再度の高まりを背景とした価格転嫁が進み物価が上振れる可能性もある」
※参考:日銀、物価上振れリスク「利上げの理由に」 6月会合要旨 – 日本経済新聞(2024年8月5日配信)
つまり、円安とインフレに対する措置として利上げが決定された、ということです。これ自体は、ある意味教科書通りといえます。
そして8月2日に米国の雇用統計が発表されました。就業者の伸びは前の月と比べて11万4,000人で、市場予想の17万5,000人程度を大きく下回りました。失業率は前の月から0.2ポイント上昇して4.3%でした。
これによって「この2年ほど米国の景気後退が来そうでこない、軟着陸するのではないか?」という期待から、アメリカの景気後退が現実味を帯びていくことになっていくのです。この場合、アメリカの中央銀行であるFRBは「利下げを行うのではないか?」という観測が広がります。
この2つの要素によって、日米の金利差が縮小する動きとなり、円高ドル安が加速しました。
次に、株価の動向です。
銀行株の現状
この米国の景気動向不安と円高によって国内の輸出関連企業が売られる展開となり、日経平均株価は暴落しました。(8月6日は反発しましたが、まだまだ市場は落ち着きがない状態です)
この環境の中で、利上げによる恩恵を受けそうな三菱UFJやSMFG、みずほFGなどの銀行株が暴落しました。冷静に業績を見ると、これらメガバンクの利益は堅調です。
出典:SPEEDAより作成
それでも、暴落は起こってしまいました。それはなぜでしょうか?その理由を解説します。