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トランプがイランを攻撃した本当の理由――米中エネルギー覇権戦争の行方と日本の岐路=高島康司

アメリカがイラン戦争を始めた本当の理由は、米国が主導する新たな国際秩序の樹立にあるという説の詳細について解説したい。特にこの秩序が日本に与える影響を明らかにする。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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アメリカが世界の資源供給国となる秩序

トランプ政権のイラン攻撃には、アメリカ独自のもっと積極的な動機があるとする説明がいま注目されている。それは、アメリカを世界の資源供給大国にして中国などの諸外国を依存させることで、ドルの基軸通貨体制と安定した米国債の価値を維持するという戦略である。

2025年11月、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を発表した。これは、南北アメリカ、カリブ海、グリーンランドなどの西半球をアメリカの生存圏として定め、このエリアにおける米国の優位を「我々の安全と繁栄の条件」と位置づけるものである。そこには、非西半球の競合国が「この地域に武力を展開したり、重要資産を所有・支配すること」を否定すると明記している。これは単なるモンロー主義ではなく、米国が事実上、世界秩序を勢力圏に分割し、西半球を米国の領域として主張する「帝国的」戦略 である。

この「国家安全保障戦略」が従来と異なるのは、エネルギー相互依存を「管理すべき条件」ではなく「国家運営の道具」として明示的に扱っている点である。米国は単なる自給自足ではなく、「米国中心性」、すなわち他者の依存構造そのものを形作る能力を求めていることだ。

さらに、エネルギーが流通し、価格が決まり、資金調達され、保険がかけられるシステム全体をアメリカが支配することで、同盟国や敵対国の行動を形作る手段とする。また、エネルギーを武器として機能させるには、それを支える金融システムが不可欠である。この点において、米国は他のいかなる大国も大規模に再現できない構造的優位性を有している。すなわち、エネルギーの価格決定、決済、資金調達が行われるシステムに対する支配力である。

その結果、ドルの基軸通貨体制は維持され、ドルが米国債などの金融商品に還流するシステムは維持される。

シェール革命によりアメリカは世界最大のエネルギー輸入国から最大の生産国、かつ主要なLNG輸出国に変貌した。原油でも実質的な純輸出国に近い地位にあり、LNG供給では世界を支配している 。ホルムズ海峡閉鎖の結果、世界のエネルギー供給体系は、湾岸地域+ロシアのユーラシア系から、アメリカを核とした大西洋系の2つのエリアに分割されつつある。アメリカの支配する西半球は、湾岸地域やロシアと肩を並べる世界のエネルギー供給地域として台頭する。

このような視点から見ると、イランがホルムズ海峡の管理権を掌握し、イラン戦争の余波で湾岸諸国の石油と天然ガスの生産能力が大幅に落ちることは、多くの国々がアメリカのエネルギー供給への依存を深めるので、資源供給大国として台頭したアメリカにとっては好都合である。

イラン戦争は実はトランプのアメリカにとっては好都合なのだ。

これで本当に中国の発展を抑止できるのか?

これが、イラン戦争をトランプが先制攻撃で始めた理由である。そしてその重要な目的の1つは、アメリカの実質的なライバルである中国の発展の抑止である。

中国は原油の80%以上を輸入に依存している。なかでも湾岸エリアへの依存は大きい。そうした状況で湾岸諸国の原油と天然ガスの輸出能力が打撃を受け、中国のエネルギー需要がアメリカに向かうことは、中国をアメリカに依存させ、アメリカの優位が維持できる。必要とあれば中国への供給を政治的に制限することで、中国をコントロールすることは可能になる。トランプの新国際秩序のプランには、このような目的が露骨にある。

しかしながら、これが本当にうまく行くのかといえば、そうは言えないという論評が実は多い。この新秩序を最初に紹介した分析者の江学勤もその一人だ。たしかに、いまの中国のエネルギー政策を見ると、トランプ政権の中国を抑止するという目的が実現する保証が実はないことが分かる。

Next: トランプの中国抑止作戦は失敗する?習近平の対抗手段とは

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