ソニーが所有するオリンパスの株式を売却する意向に対し、オリンパスは自己株式の所得を行う。そこで、両社にとってどんな影響があるかを解説します。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)
ソニーはなぜ、TOBでオリンパス株を売却しなかったのか?
オリンパスは、8月29日の終値1,165円を上限85百万株買付
8月29日にオリンパス<7733>が、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)を発表した。
※参考:自己株式取得及び自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けの決定に関するお知らせ(2019年8月29日公開)
以下は、その概要。
<1.自己株式の取得を行う理由>
・ソニー<6758>の売却意向を受け、当社は、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため、自己株式の取得を行うこととした
・当社株式需給への短期的な影響を緩和し既存株主への影響を軽減する観点とともに、資本効率の向上を図る観点からも、ToSTNeT-3による自己株式の取得を行うこととした
・ソニーからは、その保有する当社株式をもって応じる意向を有している旨の連絡を受けている
・また、ソニーとの間の業務提携は継続する
<2.取得の方法>
2019/8/29の終値1,165円で、2019/8/30午前8時45分の東証のToSTNeT-3において、買付けの委託を行う
<3.取得の内容>
(1)対象株式:普通株式85百万株(上限) (発行済株式総数(自己株式除く)の6.22%)
(2)取得総額:99,025百万円(上限)
<4.取得の結果>
(1)取得株式:普通株式80,153,100株
(2)取得総額:93,378,361,500円
※参考:自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の取得結果及び自己株式取得終了に関するお知らせ(2019値8月30日公開)
<5.自己株式公開買付け(TOB)にしなかった理由>
【ソニーのプレスリリース】
※参考:オリンパス株式会社による自己株式の買付けへの応募結果に関するお知らせ(2019年8月30日公開)
・今後の見通し
本応募による株式譲渡が、当社の2019年度連結業績見通しに与える影響は軽微
⇒自己株式TOBによる益金不算入制度による税務メリットを得る必要がなかったと推定されるが…。
~大量保有変更報告書で確認すると~
1)取得簿価:約365円/株
(取得総額25,166,553千円÷17,243,950株÷4)
※2019/3/31を基準日として1株を4株に分割
2)譲渡益:1,165円-365円=800円/株
⇒ 68,975,800株×800円≒552億円(a)
⇒ 自己株式TOBによる益金不算入制度*を利用して、受取配当金の50%を益金不算入とした方がメリットがあったのでは?
※参考:大量保有報告書 ソニー株式会社(2016年12月11日公開)
※参考:受取配当等の益金不算入制度の改正‐情報センサー2015年7月号)
【平成24年9月28日付資本提携契約書上の合意内容】
1)株式の譲渡制限
資本提携契約の有効期間中は、発行会社の事前の書面による承諾がある場合等を除いて、オリンパス株式を譲渡してはならない。
ただし、平成25年2月22日から1年を経過する等した場合には、市場売却、ブロックトレード等の一定の方法で、当該株式を譲渡することができる。
なお、ソニーは、ブロックトレード等によって譲渡する場合には、譲渡先の選定についてはオリンパスの意向を合理的な範囲内で最大限配慮する。
2)買増しの禁止
略
<6.今期税引前当期純利益(予想):7700億円(b)>
552億円(a)÷7700億円=7.2%
⇒収益30%以上の変更時は、適時開示の必要あり
6.株価終値推移
8/29 1,165円、8/30 1,244円
※参考:ソニー株式会社 2020年3月期 第1四半期決算短信(2019年7月30日公開)
<感想>
ソニーからすると、552億円は「連結業績見通しに与える影響は軽微」だと言う。
税効果メリットを考えると、本件はToSTNeT-3ではなく、自己株式TOBの方がベターなように思われる。
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『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2019年8 月31日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による