ネトウヨが原因で経営が傾くユニークなケース
アパホテルは非上場企業なので、どれくらいの経常黒字なのかは分かりません。ただ、驚くべき速さで新しいホテルを建設し、歌舞伎町のド真ん中などの好立地にもホテルを建てたぐらいなので、「かなり儲かっているんだろうな」というイメージがあります。
日本は今後、少子高齢化で人口が少なくなり、東京の一極集中化とITの発達で出張に行く機会は確実に減るため、長期的な観点で見れば、ビジネスホテルの経営は難しくなると思われます。その日が来たら土地や建物を売却する不動産業に転じるのかもしれませんが、ホテル業界は2020年の東京五輪にやってくる外国人観光客を見据え、さらに新しいホテルを建設している真っ最中です。
つまり、外国人観光客のシェアをどれだけ取れるのかが大きな鍵を握るわけですが、JNTO(日本政府観光局)の発表では、2016年に日本にやってきた外国人観光客のうち、このたびのアパホテル珍説ネトウヨ本騒動の影響がありそうな中国、韓国、台湾、香港からやってくる観光客の割合は72.6%。純粋に中国人観光客だけを見ても26.5%。
今でさえ好調なビジネスホテルを支えているのは中国人観光客なのに、これらをバッサリ切ると言ってしまっているのですから、僕がアパホテルの社員だったら白目を剥いて失神しているかもしれません。
その斬新すぎるビジネススタイルは、全国の経営者が注目する面白さだと思います。世の常識から考えたら、中国人観光客を敵に回して全国チェーンのビジネスホテルを経営するなんて狂っているとしか思えませんが、中国側の悪意ある翻訳もあって、中国には「中国人お断り」というメッセージが伝わってしまったのですから、もう二度と中国人がアパホテルを利用することはないかもしれません。
そして、今回の一件でアパホテルに微妙な感情を抱いた日本人もまた『東横イン』や『スーパーホテル』を選ぶと思うので、同じような価格帯のホテルが乱立するビジネスホテル戦国時代に、わざわざアパホテルを選ぶ理由はなく、アパホテルの収益に影響が出ることは必至です。
積極的に宿泊するのは「ネトウヨ」だけという悲しい現実。そして、残念なことに「ネトウヨ」というクラスタは声が大きいだけで、思っているほど多くありません。ネトウヨを代表する政治政党の「日本のこころを大切にする党」が議席を取れなかったように、ここまでゴリゴリのネトウヨはそんなに数が多くないのです。
アパホテルは「中国人が宿泊しなくなっても経営が傾くことはない」と強気な発言をしていますが、本当にそうでしょうか。従業員は今、複雑な気持ちだと思います。