昔から存在する「互助」
このような互助の仕組みは、相当な昔から存在しています。日本でも、「無尽講」という仕組みが鎌倉時代からあったそうです。運用方法、運用目的はそれぞれですが、基本は加入者が毎月一定額を持ち寄り、寄合を開き、お金を必要としている人が申し立てをし、集めたお金をもらうというものです。災害や病気などで大金が必要になった時の互助の仕組みというのがもともとだったようです。
しかし、それが、次第に旅行無尽(くじ引きで旅行費用とする)などの楽しみのためのものになり、さらには賭博性を帯びるなどして、たびたび禁止令が出されたり、規制がかけられ、公益性の高い無尽講は相互銀行などに発展をしていきました。
中国でも、似たような互助の仕組みは昔からありました。しかし、血縁や地縁に基づくもので、大規模な互助は生まれません。
「ネット互助プラットフォーム」の誕生
このような中から、2011年7月に互保公社が登場します。公社といっても民間企業で、草の根の互助組織を拡大したものです。当初は、オフラインで会員を集めていましたが、2014年10月に投資資金を獲得して、オンラインプラットフォームを構築、「康愛公社」と名前を改めます。これが中国で最初のネット互助プラットフォームになりました。
康愛公社の登場を見て、大量のネット互助が生まれました。2016年末までに120社以上が登場し、加入者数も1,000万人を突破しました。ところが、この互助の仕組みは保険商品ではないために、当時は当局の規制がありません。その参入しやすさにより、ネット互助企業が大量に生まれることにもなりましたが、当然ながら質の悪い企業も多く、当局の規制が始まり、2017年には数十社の営業停止命令が出されることになります。
しかし、これが次に発展する基礎になりました。不良なネット互助が淘汰され、生き残ったネット互助は互助金支払いの準備金を整備するなど、加入者が安心できる体制が整えられていきました。
その中で、テンセントの投資を受けた「水滴互助」がSNS「WeChat」と連携させることで、数千万人規模の加入者を集め、ネット互助の競争が始まります。
そこにアリババ系の「相互宝」が登場しました。元々は信美人寿相互保険社が運営をしていたネット互助「相互保」でしたが、当局の規制に従い互助金支払いの準備金を用意し、保険とは異なる商品であることを明確にするため、アリババ傘下でスマホ決済「アリペイ」を運営するアントフィナンシャルに移管され、「相互宝」となりました。
アリババ傘下のネット互助であることから、消費者の信頼を勝ち取り、瞬く間に加入者を増やし1億人を突破します。テンセント系の水滴も、これに応じるかのように加入者1億人を突破します。
こうして、ネット互助が広く認知されるようになり、滴滴出行や百度、美団、蘇寧といったテック企業が続々と参入し、アリババとテンセントの後を追いかけているというのが現在です。