長期金利は今後も上昇へ向かう?
財政支出は本来需給ギャップ(経済における需要と供給の差)を埋めるという効果があるのですが、アメリカの実質GDPはすでにコロナ危機前の97.5%まで回復しており、CBO(米議会予算局)の試算では2024年までの需給ギャップは約7,000億ドル(約75兆円)という数字が出ています。
1.9兆ドル(約200兆円)の財政支出は課題であり、インフレを招くのではないかという懸念は発生して当然だと思います。
債券市場ははっきりとした反応を示しており、アメリカ10年国債(長期金利)の利回りは2月25日の取引時間中に1.614%まで上昇しました。
昨年の大統領選挙当日11月3日の終値ベースで0.852%の利回りでしたので、4か月で倍近くの利回り水準になっています。
バイデン政権が発足するのが濃厚になった時点で、巨額の財政支出を伴う政策を発表していました。
そのため徐々に長期金利は上がり始めていたのですが、1月5日のジョージア州の上院選挙で民主党が2議席獲得し、財政支出を伴う法案が議会を通る可能性が高くなったことで、長期金利が急上昇し始めました(1月5日時点の最終取引価格ベースの利回りは0.916%)。
そして2月に入って、法案の審議が始まり、可決の見通しが高いということで長期金利が急上昇しました。
2月1日時点の最終取引価格ベースでの利回りは1.060%でしたが、ここから2月25日の取引時間中の1.614%までほぼ一気に上昇している形です(その後、少し落ち着いて3月1日最終取引価格ベースでは1.425%となっています)。
しかし、マーケット関係者の間では、今後より一層の金利上昇を予想する声は多いという状況です。
インフレは起こるのか?
アメリカの長期金利の上昇は、「良い金利上昇」なのか「悪い金利上昇」なのかという議論があります。
これについて、私は悪性インフレの兆候がある「悪い金利上昇」ではないかと言ってきました。
すでに足元では耐久消費財の価格が上昇するなど、インフレの兆候は出ています。
これに対してパウエルFRB議長は「物価の上昇は一時的で長続きしない」という立場をとっています。
私は本当にそうだろうかと思っています。