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巨額の中国マネーはどこへ向かうか?「少子高齢化」急加速で富裕層が逃げ出した=田中徹郎

社会保障費が財政圧迫

中国にとってやっかいな問題のひとつは、社会保障制度の脆弱さではないかと思います。

社会保障を担う社会保険基金への政府支出額は、日本経済新聞によると「2021年予算ベースで8.6兆元(約150兆円)を超え、2015年時点の2.2倍ほどに膨張しています。すでに国民からの社会保険料の徴収だけではカバーしきれず財政によって25.5%を補っているそうですが、この数字は2015年比3%上がっている」とのことです

今ですら現役世代(15-59歳)3.5人で1人の高齢者(65歳以上)を支えていますが、今後さらに現役世代の負担感は大きくなるでしょう。

すでに日本では社会保障への支出が政府歳出の1/3を超えて財政を圧迫していますが、急速に少子高齢化が進む中国でも、近い将来同様の問題を抱えることになるはずです。

しかも少子高齢化によって、税収も今までのような勢いで増えることはなくなるはずです。

その結果、軍事費や途上国支援、インフラ投資、国有企業支援など、中国が国力膨張の源泉としてきたこれらの分野に、今までのような大盤振る舞いができなくなるでしょう。

このように不安な同国の近未来に対し、中国の国民はどのような見方をしているのでしょうか。そして、何らかの具体的な対策をとろうとしているのでしょうか。

中国人は、日本人以上に現実的で、経済的な感性に長けていると僕は思います。そして、一部の富裕層はすでに自国経済や通貨の行く末に対し、少し懸念を持ち始めているようにも見えます。

中国マネーはどこへ向かうのか?

ここまでをまとめると、次の通りになります。

・中国では想定以上の速度で少子高齢化が進んでいる
・その結果、近い将来同国の経済は停滞期に入る可能性が高い
・国民はすでに自国の経済停滞に対し懸念を持ち始めているように見える

そして、経済に敏感な中国の富裕層は、すでに具体的な対策をとりつつあるようにみえます。

例えば、今のうちにお金を国外に移しておこうとする動きです。でも、中国では人民元→外貨への両替が1人当たり年5万ドルまでに制限されていますし、個人による海外への現金送金も年1万ドルまでの制限付きです。

しかも中国の国民は外国株への投資が制限されており、投資先は上海や深セン市場に上場している中国企業に限られています(※筆者注:中国国内の機関投資家はQDII制度のもと、一定の要件を満たした場合のみ海外証券への投資を認められていますが、中国の国民が直接海外の株式を購入することは認められていません)。

言い換えれば、当局の目が届きやすい海外送金や証券投資といったペーパーアセットの世界では、海外にお金を移動することは難しいと言ってよいでしょう。

これに対して、当局の目が行き届かないのは実物資産です。例えば、コロナ前に中国人が東京都内のワンルームマンションを盛んに買っていましたが、その決済手段の大半は現金だったと聞きます。

中国からお金を持ち出す方法は様々だそうですが、家族や知人が小分けにして現金を持ち出したり、日本にある中国法人を使ったり、違法なものから適法なものまでさまざまな方法があると聞きます(※筆者注:海外渡航者は、1回当たり5,000ドルまでなら携行証明書なしで現金を持ち出せます)。

香港で開かれるオークションで、実物資産に投資するという方法もあるようですね。

先日、NHKのある番組で、中国人富裕層による日本のウィスキー購入の話題が取り上げられていました。どうやら中国人にとっては、日本のウィスキーすらも実物資産投資の対象になり始めたようです。

Next: 中国富裕層が好む資産に先回りして投資する

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