10月31日に投開票となった衆院選だが、戦前は苦戦も伝えられていた自民党が「絶対安定多数」の261議席を確保する結果となった。
野党共闘で今回の選挙戦を臨み、反政権の受け皿となるかと見られていた立憲民主党は、選挙前を下回り100議席を割り込む形に。そのいっぽうで日本維新の会は、選挙前の4倍近い41議席を獲得し、自民党や立憲民主党に続く第三党に躍進している。
この結果を受けて週明けの1日の東京株式市場では、日経平均株価が大幅に続伸。前週末比754円高の2万9,647円と、約1か月ぶりの高値で終えた。NY市場でのダウ平均株価の高騰も追い風となるとともに、自民党の単独での絶対安定多数確保によって、経済対策などの政策が安定的に実行できることへの期待が投資家の間で高まった格好だ。
自民勝利も相次いだ閣僚経験者の落選
自民党にとって、恐らくは予想以上の勝ちっぷりとなった今回の衆院選。ただ、立憲民主党では小沢一郎氏や辻元清美氏などといった大物が選挙区で敗れたのと同様に、自民党でも過去に様々な疑惑が浮上した議員には、厳しい審判が下る形となった。
現職閣僚では、若宮健嗣万博担当相が比例代表で当選したものの選挙区では敗北。さらに石原派の会長である石原伸晃元幹事長も選挙区で敗れ、こちらは比例区でも復活当選は叶わなかったことが、大いに取沙汰されることになった。
さらに請負先の企業に対しての“パワハラ指示”音声の流出、さらにNTTグループ幹部から豪華接待を受けていたなどの、数々の不適切行動が指摘されていた平井卓也元デジタル担当相も、選挙区では当選した立憲民主党候補に2万票近くの差を付けられて落選。
また、イスラエルとパレスチナによる武力衝突が激化した際に「私達の心はイスラエルと共にあります」と一方的に肩入れする発言で物議を醸し、日大背任事件で逮捕された“アベ友”の医療法人前理事長との親密な関係が指摘されていた中山泰秀元防衛副大臣は、比例復活も果たせず落選となっている。
しかし、なかでも自民党内で大きな衝撃が走ったのが、甘利明幹事長の選挙区におけるまさかの落選。岸田政権誕生の立役者である現役の党幹事長でもあった甘利氏だが、比例で返り咲いたとはいえ選挙区では敗北したことを受けて、本人は幹事長の職を自ら辞することを岸田首相などに伝えたという。
甘利氏幹事長辞意表明で中国は高笑い?
この甘利氏による幹事長辞意の意向だが、ネット上からは今後の経済政策への影響を懸念する声もあがっている状況。というのも、岸田首相の肝いり政策である 「経済安全保障」を以前から推し進めていたのが、ほかならぬ甘利氏だったからだ。
今回の岸田政権下で「経済安全保障担当大臣」というポストが、新たに設けられたことでも注目を集めている経済安全保障。国の生存基盤や繁栄を経済面から確保すべく、基幹産業や重要インフラを支える技術や人材などを脅威から守るといった趣旨のものだが、殊に近年ではファーウェイなどを巡っての米中による技術覇権争いが激化していることもあり、経済力をつけた中国に対して、どう対処していくことで日本の国益が損なわれずに済むかという点でも、経済安全保障は極めて重要な政策のひとつとして捉えられている状況だ。
そんな経済安全保障に関する政策作りを、以前から取りまとめていた甘利氏だったが、中国側からみれば厄介な存在であることは想像に難くない。一部のメディアからは、甘利氏を自民党の要職から追い落とす工作を仕掛けるのではといった推測も、選挙前からあがっていたのだが、実際のところ甘利氏は選挙区で敗北を喫し幹事長を辞任する意向という、中国にとってはまさに高笑いの展開となっているところだ。
このようなまさかの展開に、ネット上からも「今後の経済安全保障はどうなるんだろう」といった声が多くあがるいっぽうで、党内からも今のタイミングで就任したての幹事長に辞められると、大混乱が生じるのは必至といった面からも、留任の可能性も噂されている甘利氏の件。岸田首相はその去就に対して、今のところ「本人の話を聞いた上で私が判断する」と述べるだけだが、一体どのような判断をするのか、大いに注目されるところである。
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