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日本で報道されなかった2021年「中国テック業界」10大ニュース〜テック企業規制、洗脳神曲、セクハラ事件、中国版インスタのエロ過ぎ問題まで=牧野武文

第10位:グリーエレクトリックの22歳女性秘書がネットで人気者に

格力電器(グリーエレクトリック)は、住宅用空調メーカーとしては世界市場でもトップクラスの企業です。現在の董明珠(ドン・ミンジュ)会長は、業界から多くの尊敬を集めている女性経営者です。現在、67歳ですが、30歳の時に夫と死別をし、シングルマザーとして息子を育ててきました。いろいろな仕事をしましたが、36歳の時に成績次第で高給が得られるというグリーの営業ウーマンになりました。

そこで実力を発揮し、遅咲きながら出世の階段を登り、経営層に入ると、当時の住宅、電機業界の悪しき体質に憤然と挑戦していきました。当時は、賄賂と接待が横行する業界だったのです。これをすべて悪と見做し、品質こそがグリーの強みという大正論を貫き通して、グリーを世界でのトップメーカーに育て上げました。「市場烈烈」という自伝も書き、テレビドラマ化もされた人気経営者です。経営手腕だけでなく、一人の女性の生き方として多くの尊敬を集めています。

この董明珠会長が、11月に開催された中国製造業サミットの講演で、ステージに女性秘書を伴って登壇しました。22歳という浙江大学スペイン語学科を卒業したばかりの孟羽童(モン・ユートン)で、若くて可愛らしい女性です。大学時代にミス浙江大学に選ばれたこともある才媛です(中国のミス大学=校花は、ルックスだけでなく、学業成績が優秀であることが絶対条件になっています)。

これだけであれば、よくあることですが、董明珠会長は聴衆に向かって「第2の董明珠にするつもりだ」と公言したのです。つまり、次期経営者として育成していると言ったのです。

ネットはざわつきました。経営者が若い人をそばに置き、将来の経営者として育てることは珍しくありません。しかし、孟羽童はこの夏に大学を卒業したばかりです。社会人としてはまだどれだけの実力が発揮できるのかわかりません。しかも、ネットには董明珠会長と孟羽童が手をつないで仲良く歩く映像まで出回りました。多くの人が「秘書や次期経営者ではなく、息子の嫁にしようとしているのではないか」と疑いました。

しかし、このような憶測を吹き飛ばしたのが、孟羽童自身です。サミットのステージで、聴衆は製造業界のリーダーばかりであるという環境の中で、緊張しながら自己紹介をし、得意であるというTikTokダンスを披露したのです。その度胸のよさにに多くの人が圧倒されました。会場にいたアリババの創業者、ジャック・マーは大喜びで、指笛を鳴らし、ノリノリでスマの動画撮影をしました。わずか30秒ほどのダンスで、中国のテック企業の大物経営者たちに深い印象を与えたたのです。

https://www.douyin.com/video/7041782033227549956
▲中国製造業サミットで紹介される孟羽童。その度胸のよさに働く女性としてのファンが急増した。

孟羽童は中国版TikTok「抖音」(ドウイン)にアカウントを開設し、ダンスを披露するだけでなく、仕事に対する思い、業界、社会についても語っています。その内容は大学を卒業したばかりの新社会人には思えなく、まさに第2の董明珠なのです。抖音でのファンは100万人を超え、働く女性として尊敬を集めています。数年後、グリーにほんとうに若い女性のリーダーが誕生するかもしれません。

中国では、多くのテック企業の経営者が、若い次期リーダーの育成を始めています。多くの創業者が「50歳を超えたテック企業のリーダーなどあり得ない」と考えていて、50歳までに次期リーダーを育成し、引退をすることを目標にしています。

孟羽童の登場は、このような若いリーダー育成を象徴するようなできごとでした。今後、このような若いリーダー候補がどんどん登場してくることになるかもしれません。

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