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日本で報道されなかった2021年「中国テック業界」10大ニュース〜テック企業規制、洗脳神曲、セクハラ事件、中国版インスタのエロ過ぎ問題まで=牧野武文

第9位:中国版ニコニコ動画で大ヒット蜜雪氷城の洗脳神曲によるプロモーション

今年の初夏、ネットが一時ドリンクチェーン「蜜雪氷城」(ミーシュエビンチャン)のテーマソングで占領されました。米国民謡「オー・スザンナ」の替え歌で、メロディも歌詞も単純、振り付けもシンプルなものです。それが大量に流れたため、「洗脳される!」と洗脳神曲と呼ばれるようになりました。

これは、ねらって仕掛けられたプロモーションでした。コンサル企業「華与華」が立案したもので、ビリビリ、SNS、抖音の特性を見事に活かし、これ以降、 蜜雪氷城の手法がプロモーションのひとつのお手本のようになっていきます。


▲YouTubeに転載された密雪氷城の主題歌の公式ビデオ。キャラクターである雪王が踊る。

華与華はこのプロモーションビデオをまずビリビリに投下しました。ビリビリは日本のニコニコ動画に刺激を受けて生まれた動画共有サイトで、パロディ動画をつくる空気に満ちています。もちろん、勝手にパロディ動画を作るのは権利関係上問題があるため、運営では「活動作品」と呼ばれる仕組みを整えていました。パロディ動画をつくりたい企業、個人が申請をすると簡単に二次創作ができる仕組みです。権利者が悪意のある二次創作と感じた場合は、すぐに取り消しをして、動画を削除することができます。

密雪氷城がビリビリでビデオを公開すると、思惑通り大量の二次創作が生まれました。その中には、なんと重慶大学公式や中央電子台の人気キャスター王氷氷のパロディ二次創作もあり、大きな話題になりました。

https://www.bilibili.com/video/BV1SK4y137cZ?from=search&seid=13218058583222008328
▲重慶大学公式が発信した二次創作。受験戦に重慶大学を選んでもらうためのもの。ほんとうに重慶大学なのか?と大きな話題になった。

https://www.bilibili.com/video/BV1Ey4y1M7rL/?spm_id_from=333.788.recommend_more_video.10
▲ビリビリで圧倒的な人気を誇る中央電子台の「俺の嫁」キャスター、王氷氷が降臨したことにより、ビリビリは大騒ぎになった。大量の二次創作が生まれた。

この話題がSNSで拡散し、ビリビリには大量の二次創作が生まれます。

そして、蜜雪氷城は抖音での配信も始めます。蜜雪氷城公式アカウントでも配信はしましたが、抖音では各店舗のスタッフにショートムービーを配信してもらいました。なぜなら、抖音はショートムービーを投稿すると、まず最初に、地理的に近い場所にいるユーザーに優先的に配信をするからです。ムービーには位置情報も付いているので、店舗の近くにいる人がショートムービーを見ることになり、店舗への集客が可能になるのです。

https://v.douyin.com/8YEbMbr/
▲店舗の女性スタッフが配信したダンス映像が可愛らしいと評判になり拡散。このダンスを真似た自撮りムービーも投稿されるようになる。

このビリビリで大量の二次創作を発生させ、抖音で店舗近くの人を集客するという手法は、これ以降、チェーン小売のプロモーションのお手本となっていきます。

この蜜雪氷城のプロモーションについては、「vol.087:洗脳神曲「密雪氷城」の背後に隠されたプロモーションロジック」で詳しく解説しています。

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