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日本で報道されなかった2021年「中国テック業界」10大ニュース〜テック企業規制、洗脳神曲、セクハラ事件、中国版インスタのエロ過ぎ問題まで=牧野武文

第8位:会員制ホールセールクラブの開店ラッシュ

ホールセールクラブは、日本ではコストコが有名で、会員制のスーパーであり、多くの商品がケース買いなどのまとめ買いをするスーパーです。ホールセールクラブの中国進出は早く、1996年にはウォルマート系のサムズクラブが深セン市に出店をしていましたが、あまり話題にはならず、伸び悩んでいました。

それが、にわかにサムズクラブを筆頭に、独「メトロPlus」、米「コストコ」、仏「カルフール」などが出展計画を進めることになりました。また、国内スタートアップの「fudi」、アリババの「盒馬X会員店」(フーマX)、永輝(ヨンホイ)傘下の「永輝倉貯店」も加わり、特に北京ではホールセールクラブの出店ラッシュになっています。

ひとつはスーパーの業績が低迷をし、従来の業態では将来が見えなくなっていることです。新小売スーパーや社区団購に顧客を奪われているところにコロナ禍が起こり、多くの人が密集している場所を避けるようになりました。

ホールセールクラブは、車でいき、まとめ買いをするというスタイルなので、買い物をする回数を減らすことができます。これにより、サムズクラブに人が集まるのを見て、既存スーパーやテック企業が、ホールセールクラブの出店を進めています。

ただし、軌道に乗るかどうかは、これからの売れ行き次第です。食品小売の業界は、消費者が望む業態をめぐって流動する状況が続いています。

第7位:アリババのセクハラスキャンダル

今年8月7日、アリババの女性社員がネットに匿名でセクハラにあっていることを告発しました。単なるセクハラではなく、今の時代にこんなことが行われるのかと思うほどの内容であったことから大きな話題になりました。

この女性は、山東省済南市に出張をし、商談の流れで顧客とKTV(カラオケ)に行き、そこで顧客から体を触られるなどの性的被害を受けました。これも問題ですが、本当の問題はその後です。宿泊先のホテルに戻ると、今度は上司の男性が4回にわたって部屋にやってきて、性的な関係を強要しようとしました。女性は、帰社してからアリババの人事部に訴えましたが、反応がないために、ネットで告発をするに至ったと言います。

結局、公安の捜査も始まり、アリババでも調査委員会を立て、最終的に問題の上司は永久に再雇用をしない解雇となり、すべての調査結果を公安の捜査に提供することになりました。営業部と人事部の責任者も引責辞任をする事態となりました。

問題は、アリババの営業職はこれに近い屈辱的な接待が常態化をしていたということです。アリババと言えば、中国を代表するテック企業で、「世界のすべての課題をビジネスで解決すること」をミッションにしています。そこで、昔の中国のような接待が行われていたということに多くの人がショックを受けました。

アリババは女性社員の比率が5割に近く、女性が最も働きやすい企業のひとつだと言われていました。また、古い時代の接待営業などはしない企業だというイメージもありました。それが崩れてしまったのです。アリババのイメージが大きく傷つけられた事件です。

第6位:ウイグル強制労働問題

新疆ウイグル自治区のウイグル人が綿花収穫の労働を強制されているという問題は、中国国内でも大きな話題になり続けています。ただし、中国政府は、強制労働というのは米国が捏造したフェイクニュースであるという主張をしています。中国のネットでは、BCI(Better Cotton Initiative)が自分たちが扱う綿花の利用を拡大するために、ライバルであるウイグルコットンを使わないように攻撃しているという説が信じられています。

この強制労働があるのかないのか、誰にもわからない状態です。米国政府も断定はしてなく、「強制労働の疑い」という表現を使い、強制労働の決定的な根拠というのは存在しません。一方で、中国政府もフェイクだと非難するのみで、公平な組織による視察や現地調査も受け入れず、真実を明らかにする道筋がまったく見えない状況です。

その中で、アパレルブランドH&Mが、ウイグルコットンを扱わないことを表明すると、EC「淘宝網」(タオバオ)、京東(ジンドン)、ピンドードーなどがH&M製品の取り扱いを止めるなど、民間レベルでも対立が続いています。

私にはこの強制労働があるのかないのかを知る術はありません。しかし、かなり以前から「ウイグル人にとって、綿花収穫は高給がもらえるいい仕事」という話は聞いていました。ウイグル人だけでなく、漢民族の人も綿花収穫の出稼ぎに行く人がいるということも聞いたことがあります。ただし、仕事そのものは重労働であり、とてもつらい仕事だそうです。感覚として、日本の都市伝説のひとつである「マグロ漁船」に近いのだと感じました。

ウイグルでは、東トルキスタン独立運動が行われていて、一部のウイグル人過激派により2013年には天安門に自動車で突入する自爆テロにより5人死亡、2014年には雲南省昆明駅で、8人のウイグル人が刀を振り回し、34人が死亡、143人が負傷するというテロが起きています。この無差別テロは中国国内だけでなく、国際社会からも大きな非難を浴びました。

そのため、過激派グループは舞台を新疆ウイグル自治区内に移し、炭鉱襲撃や市場での自爆テロを次々と起こしたため、新疆ウイグル自治区は、重要な産業であった観光収入がほとんどなくなりました。危険であるために、誰も観光に行かなくなってしまったのです。そのため、善良なウイグル人は綿花による収入に頼らざるを得なくなっています。

それが、この強制労働問題で、ウイグルコットン産業も停滞をすることになると、ウイグルの経済はどうなっていくのかという心配の声が挙がっています。すでに新疆ウイグル自治区の外に仕事を求めるウイグル人も増えています。問題のすべてが最終的に被害を受けるのが善良なウイグル人であるというところがこの問題の複雑なところです。

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