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2022年前半の日本株急落に要警戒。米国「金融政策の修正」が誘発する5つの大波乱=馬渕治好

年が明け、1月も半分を過ぎました。この2週間で2022年の市場を占う動きも出てきました。先週は方向感のない荒い動き動きでしたが、今週はどうか?また2022年の日本株は強く動くのかを予測していきます。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2022年1月16日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2022/01/16号より

過ぎし花~先週(1/10~1/14)の世界経済・市場を振り返って

<市場動向は方向感ない荒い動きで、材料とも不整合、その底流には不安心理>

(まとめ)
先週の世界市場は、上下に荒れる展開となりました。米国株などは、場中で前日比で大きく下落していたが、引けにかけて大きく上昇に転じるなど、日々だけではなく日中の値動きも荒いものでした。

それでも先週の動きに色合いを見出すとすると、週前半は世界株価が上昇気味、後半は下落気味だったと言えましょう。その材料として考えられるのは、まずパウエル議長の議会公聴会での証言が穏健だと解釈されたことと、週末金曜日に公表された12月の米小売売上高が弱かったことだと思います。

ただ、他にも種々材料がありましたが(また、逆にさしたる材料がなかった日もありましたが)、そうした材料にきちんと応じて株価が上下したわけでもありませんでした。また、米国では、株式市場と債券市場の動きに整合性がなく、材料の解釈も両市場で違っている、といったこともよく生じました。こうした現象の背景は、投資家が方向感を失って売買した結果、材料とはあまり関係なく、値ブレが頻繁に生じた、ということなのでしょう。

それでも、先週ほぼ一貫して生じた市場の動きは、小型株の不振と、米ドル安及び円高の進行でした。

(詳細)
先週の世界市場は、日々だけではなく、日中の値動きも、荒れた展開となりました。それでも、先週の世界株価の動向に方向性を色づけるとすると、週前半は上昇気味、後半は下落気味でした。

週前半に株価を押し上げた材料としては、1/11(火)のパウエル連銀議長の上院公聴会での発言が指摘されています。これは議長再任を上院が承認するための手続きの一環でした。ここでパウエル議長は、景気(特に雇用)の回復やインフレ懸念を受けて「金融政策の正常化を進める」といった、テーパリング(量的緩和の縮小)の推進や、先行きの利上げなどを示唆する主旨の発言を行ないましたが、その点は株価上昇要因になったとは考えにくいです。

株式市場が好感したのは、「おそらく年後半に保有資産の縮小を始めるだろう」「正常化するまでは長い道のりになる」との発言の部分でした。一部の市場参加者は、年前半にでも量的引き締め(保有資産である債券を売却して、市中から現金を回収する)が始まるとの懸念を抱いていたため、心配したほど量的引き締めは早くないと、安心したのでしょう。

ところが1/13(木)は、米国の主要な株価指数が下落し、特にナスダック総合指数の下落率が大きく、それは金利上昇懸念による高PER銘柄への売りが嵩んだため、と解説されました。

しかしこの日は、とりわけ金利に関する材料がなく、しいて言えば、ブレイナード次期副議長の議会公聴会での発言でしたが、それはパウエル議長の上述の発言内容とほぼ主旨は一緒で、特に金利上昇を強く意識させるようなものではありませんでした。しかも、同日の10年国債利回りは実際には低下しており、金利先高観だと称して高PER銘柄が売られた米株式市場の反応は腑に落ちませんし、同日の株式市場と債券市場の動きもまったく不整合です。

週末にかけて株価の悪材料となったのは、1/14(金)に公表された、12月の米小売売上高でした。クリスマス商戦は好調だったとの諸報道が多いなか、この小売売上高は前月比で1.9%減少し、驚きとともに、個人消費に不振の影が現れたとされて、ニューヨークダウ工業株指数は前日比で下落しました(ザラ場安値からは持ち直しましたが)。

ところが、こうした景気の弱さを示す経済指標の発表にもかかわらず、米10年国債利回りはかえって上昇しました。その金利上昇に対し、本来は脆弱なはずの高PER銘柄が買われて、ナスダック総合指数は引けにかけて回復し、前日比で上昇する形となりました。

このように、先週の米国市場をつぶさに見ていくと、材料と株価や債券価格の動きの整合性がありませんし、両市場間の関係もバラバラです。

<先週の米国市場の動きをどう解釈するか?>

では、先週の米国市場の動きをどう解釈すればよいかと言えば、大きな流れで金融緩和縮小などによる不透明感が強まっており、投資家が市況の先行きに自信が持てなくなって、材料の有無やその材料が本来意味することに関係なく、右往左往して売ったり買ったりしている、という事態に陥っているのだと考えます。

つまり、投資家心理が混乱しているのだと推察しますが、そうした心理は、「よくわからないので、リスクが高いものは避けよう」という投資行動につながりやすくなります。

先週一貫して進んだのは、昨年11月以降顕著になっている、小型株の不振です。米国ではラッセル2000指数の不振が目立ちますし、日本でもマザーズ指数の下落基調が進んでいます。

また先週の外国為替市場では、米ドル安と円高が同時進行しました。米ドル安は、概ね11/13(木)まで米長期金利が低下していったためだと考えられますが(逆に11/14(金)は米長期金利が上昇し、米ドルもやや回復した)、円高は市場全般を覆う不透明感から、「リスク回避のための円高」が進んだためだとみています。

このように、投資家のリスク回避姿勢が嵩み、リスク資産から資金が逃げていく、という傾向は、今年前半は一段と進んで、世界的な株安と外貨安・円高基調がより明確になっていくと懸念します。

Next: 今週(1/17~1/21)の世界経済・市場はどう動く?

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