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2022年前半の日本株急落に要警戒。米国「金融政策の修正」が誘発する5つの大波乱=馬渕治好

では、なぜ日本やその近くでリスクが生じても、円高になるのか、と言えば、「これまで円高になったから」でしょう。つまり、過去に日本でリスクが生じた時に、実際に円高になったので、たぶん今回もそうなるだろう、と考えた投資家が、理由は考えず、反射神経的に円を買っているため、円高になっているのだと推察しています。

あるいは、為替を売買している機関投資家が、本音では「今回は円高に向かわないだろう」と考え、円を売っても、円高に市況が向かって損失を被った、ということが繰り返されれば、理不尽であっても、円高に賭けざるを得ない、という心理に陥ることもありえます。

こうした理不尽な円高がどうなると終わるかと言えば、日本でリスクが生じた時に円をたっぷり買った投資家が、大幅な円安になって巨額の損失を被り、「もう日本やその近くでリスクが生じても、円を買うのはこりごりだ」と反省すれば、「リスク回避のための円高」は終わると考えます。

【中長期シナリオ結論】(2022/1/2時点)

<2022年前半のシナリオ>

2022年の世界市場は、年前半、株安・外貨安(円高)に、一度大きく振れるだろう。その主要な要因は、米国の金融政策が企業や投資家に与える影響と、「中国リスク」だ。

米連銀は11月からテーパリング(量的緩和縮小)を開始し、来年1月から縮小を加速することも決定した。利上げ開始の時期も、当初想定より早く、2022年前半の可能性が高まっている。

米マクロ経済が好調だからこそ緩和を縮小するわけであり、また緩和脱却は、一気にではなく、段階を踏んでいこう。そのため、本来は、緩和縮小は大きな波乱要因にはならないはずだ。

しかし、米国の企業や投資家、市場はこれまであまりにも金融緩和に依存してきたため、金融政策の修正が大きな波乱を引き起こす恐れがある。

そうした波乱とは、具体的には以下などを想定している。
1)脆弱な米国内産業・企業の資金繰り破綻
2)米国における、社債の発行市場の好調さに依存した企業の資金調達の変調と、それが自社株買いの減退につながる恐れ
3)世界的に、低金利による運用難でリスクをとっていた投資家が、長短金利の上昇でリスク資産(株式等)から一気に利回り物に資金を移動する可能性と、それを材料にした株式売りなどが嵩む展開
4)株式の信用取引や、ジャンク債(格付けの低い債券)、その他高リスク取引を拡大していた投資家の破綻
5)米ドルに依存してきた新興国の苦境(米ドル建て債務の借り換えの困難化、米ドル高・自国通貨安を防衛するための望まない利上げなど)

また、中国の様々なリスクは、2022年に噴出しよう。そうしたリスクとは以下などだ。
1)中国経済の減速
2)米中対立の深刻化(安全保障面の衝突を含む)
3)中国政府による突然の産業政策の変更(IT、不動産、株式投資、教育産業など)と、それを嫌った世界の投資家による中国市場からの逃避
4)中国企業の巨額の債務問題

加えて、先進国経済や企業収益が、回復基調にはありながらも既に回復の勢いが衰え始めていること、物流などの人手不足が輸送コストの上昇や品不足を招く可能性、欧州でEU(欧州連合)の求心力に陰りが出ていることなど、不安材料は極めて多い。

このため、日米等主要国の株価は、一時的であったとしても、年央までに大きく下落する局面があるだろう。日米の主要な株価指数は、2022年は、2021年の安値を大幅に割り込むと懸念する。外貨相場も、いったん外貨安・円高に振れ戻ろう。

具体的な下値めどは、日経平均は2万5,000円、ニューヨークダウは3万ドル、米ドル円相場は1ドル100円程度を想定している。ただしこれは大まかなめどに過ぎず、実際の下値はこの予想数値からかなりずれることがありうる。

<2022年後半以降>

2022年前半で、世界市場の波乱が一巡すれば、2022年後半以降、長期的には、主要国の株高・外貨高基調に復すると予想している。その要因として最も大きいのは、世界的な景気拡大の持続だ。それを支えるのは、新興諸国を中心とした人口増であり、技術革新、新商品・サービスの開発だろう。

加えて、2022年前半の市場の波乱が実体経済に著しい悪影響を与えると判断されれば、米連銀が緩和縮小の中止、あるいは再緩和を打ち出す展開もありえよう。

個別に見れば、2022年の波乱という試練をくぐり抜け生き残ることができた企業や投資家は、強いものだろう(弱者の淘汰)。そうして生き残った企業や投資家が、先行きの経済や市場を支えていこう。

2022年末時点の見通し数値としては、日経平均が3万2,000円手前まで、ニューヨークダウが3万8,000ドル手前まで、米ドル円相場が115円手前まで戻りうると考える。日米株価は、2021年の高値を2022年末までに抜き返すことができない場合でも、2023年の早いうちには高値を再奪回するものと予想する。10年単位で展望し、株式等リスク資産を保有すべきだと考える。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2022年1月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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