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ウクライナ戦争で露呈した世界一インフレに弱い「円」。米国のみが潤う経済制裁から離脱する道はないのか?=吉田繁治

岸田首相はNATO会議に嬉々として出席していますが、その間にインフレの芽が生まれ育とうとしています。米国、ロシアはエネルギーと食料で自立できますが、日本は経済安全保障では世界最弱と言えます。ロシアへの経済制裁国家から離脱すれば、日本の円安、インフレは収束します。『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年6月29日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界一インフレに弱い「円」

米国とロシアは、エネルギーと食糧で自立できる国家です。西欧と日本は、両方で自立できない。特に日本は、エネルギーと資源の95%、食糧の63%を輸入に依存する国家であり、経済の安全保障では世界一弱い。

米国とロシアでは、戦争と経済封鎖で、エネルギー・資源・食糧が高騰しても、国内のメジャー(商社のような大手卸売業)、生産業、兵器産業の売上増加になり、CPIのインフレは世帯の負担増になりますが、マネーは国内で還流します。

米国とロシアからは、マネーは流出せず、逆に、エネルギー・資源・食糧・兵器の輸出の金額が増えた分のマネーが流入します。

これは、戦争が、対外的な通貨レートが高くなる基盤になっていくことを意味します(=輸入国の西欧と日本の通貨は、安くなる)

西欧はウクライナ戦争の長期化と、ロシアからの、輸入の停止の経済封鎖で、自国経済が痛みます。

経済と生活の基礎物資で、輸入依存が世界一大きな日本は、エネルギー・資源・食糧・兵器の輸入で、国富の流出量が増え、世界一大きく痛むのです。猛暑になる7月からは、現代の住宅では必須になった空調用電気代の高騰に加え、広域停電(ブラックアウト)の恐怖もあります。

戦後80年、経済安全保障を取らなかった日本は、インフレでは貿易赤字の急増になるため、円は世界一インフレには弱い通貨でしょう。ウクライナ戦争のあと、先進国通貨で円が独歩安になった理由がこれです。

戦争の経済的利害で3分割された世界

(1)EU 内であっても、戦争の経済的な被害が及ぶドイツ、フランス、イタリアでは、早期停戦の世論が強くなってきました。

(2)一方で、ポーランドを代表とする東欧は、ロシアの地政学的脅威に晒されている国なので「対ロ強硬派」です。

(3)米国、ロシアからの原油・天然ガスの輸入が少ない英国、そして、欧州の戦争から利益を受ける、資源国のカナダと豪州は、「戦争長期化」をいう。

ウクライナ戦争への各国の態度は、「戦争の経済的利害」で分割されているのです。

戦争で、輸入が増える国の通貨は下がり、輸出と経済安全保障があって買いが増える通貨は上がる。この単純な原理が、世界の外為相場で働いています。

(注)2022年の8月に、

・失業率が3.5%と過熱状態になっている米国の求人数が下がり、
・雇用の過熱からの、5%の賃金上昇が、消費景気をもたらしている景気が後退して、
・FRBが、秋の利上げを停止すれば、

2022末の、米国短期金利3.5%を織り込んでいる「ドル/円」相場は反転し、120円台に振れることもあるでしょう。

購買力平価やビッグマック指数では、1ドル=90円辺りが均衡点ですが、2022年はそこまでは行かないでしょう。1ドル=135円の円安は、米国経済が強いからではなく、日本経済が、戦争にもっとも弱いために起こったことです。

ウクライナ戦争が、22年9月から11月を超えて長期化すれば、円は弱含みを続けるでしょう。しかし停戦後も、米国主導の「ロシアの経済封鎖」は続きます。

2022年11月からのエネルギー・資源・食糧では、金融の投機によるコモディティ指数の高騰分はなくなるでしょうが、大きな下落はないとみています。日本のインフレ率(CPI:総合)は、預金金利がゼロのまま、現在の2%台に、22年秋からは、円安効果が加わって3%台、4%台と高くなっていくということです(推理的推測)。

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