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なぜ短期トレーダーは「勝ち逃げ」できずに資金を溶かすのか。破産するまで続け、再起してもまたトレードに戻ってくるワケ=鈴木傾城

買っても負けてもトレードからは逃れられない

しかし、そうなっても「次は勝つかも知れない」と思うのがトレードの怖さだ。

FX(外国為替証拠金取引)で自己破産したトレーダーが、働き始めたのはいいが最初の給料をまたトレードに全額つぎ込んだという話はフィクションではない。

勝っても負けても、トレードに引き込まれた者はそこから逃れられない。

中にはこうした世界で超絶的な才能を発揮して億単位のカネを手に入れる勝者も「わずか」に存在する。100%勝てない世界ではなく、トレードの才能がある「わずか」な人間が勝てる世界なのだ。

これは、宝くじと同じで凄まじく勝率は低いものの、それでも隕石が自分に当たるような幸運で当てる人も世の中にはいるのだ。そうした「わずかな事例」があるから、よけいにトレーダーは離れられなくなるとも言える。

「才能があるのかどうかは、トレードをやっている途中で気づくはずだ。才能がないと思えばやめればいいではないか」と部外者は簡単に言う。しかし、そこにもトレーダーを錯誤させるワナがある。

デイトレードは1回だけやって1回負けてすべてが終わるというものではない。小さな勝負を無数に、無限に繰り返し、その中で確かに勝てた勝負も積み重なるのである。だから、大きく勝てばいけるとトレーダーは思い込む。

トレーダーを虜(とりこ)にする大きな原動力「スリル」

デイトレードは、即効で結果が分かる。勝てば脳内でドーパミンが大量に分泌される。つまり、即効で快楽が得られるということだ。勝負時にはアドレナリンが大量に身体を駆け巡り、勝てばドーパミンが分泌される。

これが「スリル」になる。このスリルというのが、トレーダーを虜(とりこ)にする大きな原動力だ。即効でスリルを味わい、それをくぐり抜けて利益が出たら脳内に快楽物質が広がって多幸感を味わえる。

負ければどうなるのか。負ければ多幸感はないのだが、多幸感を求めて「もう一度やろう」という動機が生まれる。多幸感が手に入ればもっと欲しくなり、多幸感が手に入らなければ次のトレードで多幸感を手に入れようとする。

まさに無限地獄がそこに待っている。これが、トレードの魔力なのである。常に勝ち続けるトレードはなく、常に負け続けるトレードもない。それが感情の高ぶりや悔しさを生み出して飽きない。

そうやってのめり込んでいくうちに、ついにはトレード中毒になって、朝から晩まで24時間そこに張り付いて他のことは何もできなくなっていく。そして、いつしかひとつひとつのトレードが雑になっていき、破綻の道を歩んでいく。

Next: もはやギャンブル依存。トレーダーと長期投資家はまったく違う人種

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