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なぜ韓国大統領選はスキャンダル暴露合戦になるのか。勝てば「三権総取り」ですべて不問に=勝又壽良

韓国大統領が持つ「報復人事」の権限

韓氏は、法廷で次のようにも陳述した。

韓氏は証言席で柳被告の発言でどんな被害を受けたのかという検事の質問に対し、「現職検事で唯一、4回も(人事で)左遷された」とした上で、「柳元理事長が謝罪するまで1年半の間、捜査権を個人的に乱用した悪者の検事になった。チョ・グク氏の捜査など権力による不正の捜査を行ったことに対する報復だと思う」と主張した。

出典:同上

韓氏は、19年に大検察庁(最高検察庁)反腐敗強力部長として、「チョ・グク」事件の捜査を指揮したが、20年1月に釜山高検次長検事に異動。同年6月以降は法務研修院研究委員に異動し、京畿道の竜仁分院と忠清北道の鎮川本院で勤務後、21年6月に司法研修院副院長に任命された。

これらの人事異動のコースを見れば、文大統領が韓氏を左遷したことは明らかだ。最高検察庁幹部が、地方の検察庁へ「島流し」され閑職に追いやられたのだ。

こういうケースは、文大統領だけが行なった訳でない。朴槿惠(パク・クネ)前大統領は、政権に不利な捜査を行なったとして、現在の最大野党「国民の力」の大統領候補である、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を左遷したのである。

韓国大統領は、こういう報復人事を平気で行える権限を持っている。

この尹氏は、弾劾罪で逮捕された朴氏を皮肉にも捜査することになった。これを見た文大統領は、尹氏を高く評価して検察総長に抜擢した。尹氏はその際に発した言葉である、「権力に奉仕せず罪を憎む」という名台詞通り、司法長官チョ・グク氏の捜査を命令した。そのときの捜査担当者が、前記の韓氏である。

文政権は、尹検察総長を酷く憎み2020年中、「辞任させる」圧力を2度も掛けたほど。一方では、韓氏も左遷させる扱いをした。尹氏は、朴・文の両政権から不当な扱いを受ける結果になっただけに、韓国大統領制がいかなる矛楯を持っているか、身を以て体験させられた貴重な証人である。

文の溺愛が生んだ介入

日本でも知れ渡った「チョ・グク事件」(タマネギ男)は、連座したチョ元司法長官夫人の最終判決が先に出た。

韓国大法院(最高裁)は、チョ・グク元法務部長官の妻のチョン・ギョンシム被告に対する起訴事実15件のうち12件について有罪判決を言い渡した。この判決によって、検察は政権側の「公訴権の乱用」だとする批判をかわすことができ、捜査の正当性も認められた。大法院判決後、捜査を指揮してきた前記の韓氏は、「正義と常識に見合う結果」と述べたという。

文大統領は、事件からチュ・グク元司法長官を守ろうとした。文氏は、チョ氏を後継大統領候補に考えていたのだ。それだけに、チョ氏を捜査する検察を異常なまでに憎悪して職務から追放する行動に出た。文大統領の笑顔の裏には、検察への敵愾心が隠されていたのである。

文大統領は巧妙である。自らが関わった事件で退任後に捜査されないよう検察とは別組織の公捜処(高位公職者犯罪捜査処)を強引に設立した。大統領、国会議長、大法院長などの高位公職者の犯罪捜査を専門とする独立機関である。なぜ、屋上屋を重ねる組織を作ったかだ。野党の反対にもかかわらず公捜処を設立した背景に、与党政権を半永久的に継続させる野望が隠されていたのだ。

文政権発足当初、与党議員が北朝鮮で「今後20年間、進歩派政権を継続させ南北統一を実現する」と大構想を披瀝している。北朝鮮側に、南北統一の夢を持たせるべく、文政権は着々と準備してきたのだ。その一環が、政権の犯罪を検察に捜査させず、政権の身内である公捜処で防ごうとしたことは間違いない。文政権は、これを「検察改革」と称している。現実は、韓国が北朝鮮と一体化するための準備工程であることは間違いない。

Next: 文政権が隠さない「北」への異常な執着ぶり

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