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なぜ韓国大統領選はスキャンダル暴露合戦になるのか。勝てば「三権総取り」ですべて不問に=勝又壽良

見せかけの大統領制

大統領制の元祖は米国である。米国と比較すると韓国大統領制は、民主主義の基本原則を超越した絶対的な権力を握っている。まさに帝王的な権力掌握である。

それゆえに、贈収賄という忌まわしい事件が発生しやすい土壌を生んでいる。文大統領は、こういう韓国大統領制の持つ根本的な欠陥を是正せず、検察を悪者にして「検察改革」と嘯(うそぶ)いている。検察に対して、政権側を捜査するなという、まさに帝王的な要求なのだ。

韓国検察制度は、日本から導入したものだ。日本は明治時代、フランスの検察制度を導入した。フランス検察制度は、捜査と起訴という2つの機能を持つ。この二刀流を韓国は問題視する。「検察横暴」という背景である。日本ではそういう声を聞いたことがない。検察に信頼感があるからだろう。江戸時代の大岡越前守が、公平であったこと。それが、庶民の信頼を得たという歴史に基づく面もあろう。日本における司法への信頼度は、韓国よりもはるかに高い。それは、日韓の政治制度の違いによる面もある。

米国大統領制では、強力なリーダーシップを持ちながらも王政のような暴政になってはいけないという仕組みが用意されている。「チェック・アンド・バランス」である。つまり、「3権分立」である。大統領(行政)・議会(立法)・裁判所(司法)が権力を共有して互いに牽制し合うという制度である。議会は、大統領を牽制するために行政府の人事・予算・立法をすべて左右する権限を有している。

バイデン政権は、目玉政策である「教育・医療・気候変動への対策」が成立の瀬戸際にある。約2兆ドル(約228兆円)の歳出法案だ。1人の民主党上院議員の反対で、バイデン政権の「ビルド・バック・ベター(より良い再建:3B法案)」が宙に浮きそうである。

この例が示すように、与党議員の反対で目玉政策の実現が危ぶまれるほど、「三権分立」が見事に確立しているのである。

韓国の大統領は「皇帝」として君臨する

韓国は、米国と全く異なっている。つまり米国議会では、大統領を牽制するために保有している主要権限が、韓国では大統領本人が握っているのだ。

まさに「大統領=皇帝」である。韓国大統領は、具体的に次のような権限を持つ。

第一、人事。首相の場合には任命の同意が必要だが、長官は国会が聴聞会で拒否しても大統領が任命を強行すればそれで終わりだ。文在寅(ムン・ジェイン)政府で野党の同意なく任命された長官級は30人を超える。

第二、予算。国会の審議を受けるが事実上要式行為にすぎない。国会に実質的な予算決算審議能力がないためだ。予算を十分に監査するためには大統領直属の監査院が国会に移ってこなければならない。

第三、立法。行政府に法律提出権があって、必要なら与党議員の名前を借りて提出する「請負立法」も多い。ひとたび提出されれば与党が無条件に通過させる場合が多く、事実上、行政府が立法を主導しているのも同然だ。

出典:【コラム】誰になっても非好感…「大統領権限の縮小を」=韓国(1)」- 朝鮮日報(2022年1月27日配信)

前記の人事・予算・立法が、大統領の掌中にあることは驚くべきことである。これでは、韓国の三権(司法・行政・立法)のすべてが、「文皇帝」の采配下にあることを示している。

Next: 相手候補をスキャンダルで蹴落とすだけの韓国大統領選挙

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