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「高くて激マズ」北京五輪の食事で露呈した中国衰退と財政危機。人工雪で「貴重な水」を失う“異常政治”=勝又壽良

冬季オリンピックに湧く北京だが、その裏側で選手やメディアセンターの食事が高くて不味いという批判が世界中に広がっている。これこそが北京が経済的に追い込まれている証拠だ。中国が置かれた経済的窮状の深刻さについて解説する。『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年2月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

人工雪に使われた「貴重な水」

北京冬季五輪が2月4日に開会した。五輪史上、同一都市が夏・冬の開催地になったのは初めてである。

立地的に、同一都市の開催が困難であることを示している。中国は、敢えてそれに挑戦した。習近平氏の民族主義がそうさせたのだ。目的は、国威発揚である。

華北平原は、立地的に水資源が貧困である。地下水に頼るという悪条件下だ。この華北平原は雪が少ないことでも知られている。

ここで、冬季五輪を開催するのだから、人工雪に頼らざるを得ない。貴重な水を競技用に使うことでもある。本来なら、食糧増産に向けられるべき水資源が、人工雪に化けたのである。

環境専門家からは、批判を浴びている。

北京五輪の水面下に「2つの国力低下」

北京冬季五輪は、過去の五輪と比べて次のような点で目立つ存在だ。

1. 各国首脳の出席者が少ない
2. 選手村や報道陣の食事内容が粗末で値段が高い

これらの問題は些末な問題に見えるが、決してそうではない。

中国の国際社会における閉塞状態が各国首脳の出席を減らしている。また、中国が財政的に逼迫化してきた前兆が、食事が高価で粗末になっている背景に窺える。

従来であれば、安価でおいしい食事の提供になるはず。それが、予算不足で思わぬ結果を招いているのであろう。

これでは、習氏が狙う国威発揚と逆行するであろう。

以下、前記の2項目について取り上げる。

<(1)各国首脳の出席者が少ない>

これは隠しようがない事実だ。2008年8月、北京夏季五輪開会式に出席するため、中国を訪れたロシアのプーチン大統領は、胡錦濤国家主席(当時)に会うため、30分間も並ばなければならなかった。

14年の歳月が流れ、今回の冬季五輪開会式に出席するため、北京を訪れたプーチン大統領に対する中国の態度は、破格の扱いになった。プーチン大統領は、習近平中国国家主席と単独で会談した。エネルギーや金融、宇宙など15分野にわたる協定に署名もしたのだ。プーチン氏は、前回の五輪で「お客様の1人」。今回は「主賓」へと格上げされた。それだけ、中国の外交関係が狭められていることを示している。

14年前の開会式には、米国など68カ国の大統領・首相ら首脳が出席した。それに比べると今回は、3分の1にも満たない。G7首脳が揃って「外交的ボイコット」をしたことが大きく響いた。『ブルームバーグ通信』の報道によると、今回の五輪開会式には、21カ国の首脳らが出席予定であった。実際には、サウジアラビアとアゼルバイジャン2ヶ国が欠席した。結局、出席国は19ヶ国であり、そのうち強権国家(非民主主義)の出席は8ヶ国となった。

強権国家のうち中央アジア5カ国は、中国政府による5億ドル(約570億円)の支援と新型コロナウイルスワクチン5,000万回分提供の表明を受け、首脳参加を発表した。つまり、「経済支援」という土産がついたので北京冬季五輪開会式へ出席した。非強権国家のアルゼンチンのフェルナンデス大統領は、北京滞在中に中国との2カ国間の通貨スワップ協定延長を中国側に要請する目的で五輪開会式に出席している。出席した目的は、外にあったのだ。

前記『ブルームバーグ通信』の計算によると、北京冬季五輪開会式に出席した国々のGDP合計は、世界の6%に過ぎないという。中国は、この国々を含めてせいぜいGDP1割強の国々から支持されているとも言える。

こう見ると、習近平氏が力んでいる足下は、実に脆弱そのものと言える。世界GDPの9割弱を占める国々は、中国とは異なる価値観であることを示している。中国には、「真の友人」が少ないのだ。

Next: 衰退は避けられない。「不味くて高い食事」の意味するもの

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