崩れた「土地本位性」
ここから話題は、中国経済不振論へと繋がって行く。
中国経済は、「土地本位性」で発展して来た。「土地本位制」と言っても、これは学術用語でなく、私の造語である。土地の値上りを前提にして組立てられている経済という意味である。いま、この想定が根本からひっくり返った。頼りの土地が、値下がりに転じているからである。
「金本位制」は、金地金の生産が増えないので価値が安定しているという前提であった。そのことが、逆に経済成長の足かせになり、ついに金本位制を離脱して管理通貨制に発展した。
こういう歴史を考えると、中国の「土地本位性」は、本質的に通貨膨張を招きバブル経済を生み出す脆弱性を抱えている。この点が、「金本位制」と決定的に異なる点である。
こうして中国は今後、「土地本位制」を離脱しなければならない。その痛みが尋常でないという覚悟をすべきである。不動産バブルは、主要投資が不動産開発であったという意味でもある。住宅は消費の場所であり直接、生産性向上には繋がらない。もっとも、家庭生活が安寧であれば安んじて勤労に励めるという理屈は成り立つ。
だが、工場の機械設備と異なって、大きく生産性に寄与しないのだ。中国は、不動産バブルで表面的にGDPを押し上げたが、中身は空洞であった。その空洞経済が、今後の中国を苦しめるはずである。
習近平の権力誇示のために犠牲になる14億人の国民
中国の生産性伸び率は低下している。2000年代初めに年間3.5%だった。ところが、過去10年間は年間平均で0.7%と急落している。
この背景には、習氏が国家主席に就任後、不動産バブルを煽ってきたことと国有企業を中核とする産業構造へ転換したことだ。IMFによれば、中国国有企業の生産性は民間企業より約20%も低い。習氏は、これら生産性の低い国有企業により多くの資金を投入したのだ。
習氏は、見せかけの高いGDP成長率に拘った。それが、習氏の権威を高め「国家主席3期目」を確実にするという思惑であった。個人の思惑が、中国経済の道を誤らせたのである。
これほど、悲劇的なこともあるまい。1人の独裁者が、14億人の国民の暮しを変える。あってはならないことである。