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日本がコスト負担?ロシア制裁で“第3次石油危機”懸念、脱炭素化が遅い国に「国境炭素税」を押し付けへ=斎藤満

つなぎ措置としての選択肢

まずロシアへの経済制裁が短期間で終わるとみれば、ある意味ではつなぎの対策が許容されます。

例えば、ロシアによるウクライナ侵攻が行き詰まり、ロシアの体制がプーチン大統領の失脚、新しいリーダーの登場となれば、新体制の方針、西側とのかかわり方いかんで、今回の厳しい経済制裁が緩和される可能性があります。

その間の臨時の対応となれば、ある程度、選択肢は広がります。

まず脱炭素の流れの中で抑制方針の石炭火力発電も、緊急事態用の臨時対応ということであれば、新型の高性能石炭火力発電の拡大、稼働率引き上げが考えられます。

これを使い果たした場合に、効率の悪いCO2排出の多い石炭火力発電を使うかどうか。設備改修など、資金をかけてまで再稼働させるかは、判断の余地があります。

その点、稼働停止となっている原子力発電の再稼働が議論に上ると見られます。長期的には原発依存が2割強としつつも、短期的には条件付きで再稼働が認められるケースが増えると見られます。

これと大規模地震などの自然災害が重なると大きな問題が生じますが、短期対応であれば、災害対策、避難方針を固めたうえで、再稼働となるところが出てくると見られます。

ロシア制裁「長期化」の場合、インフラ開発が加速する

一方、プーチン政権が力づくでウクライナを制圧した場合、対ロシア制裁が長期化する可能性があります。

そうなれば、長期的な脱炭素戦略を併せて進めざるを得なくなります。これまでコスト面で躊躇してきた再生可能エネルギーへのシフトも、原油価格が100ドルを大きく超える中では進めざるを得なくなります。

すでに欧州で進めている海洋風力発電も、採算ラインに乗ってくるでしょう。また火力発電でも、排出するCO2の再利用技術が開発されていますが、今後これが進み、排出されたCO2を再利用することで最終的にCO2を出さない火力発電も可能になります。

当初はコスト高でも、再生可能エネルギーへのシフトが進むまでは、既存の火力発電でいかにCO2を抑えるか、その再利用技術は官民で開発推進する余地はあると考えられます。

同時に、景気抑制にならない形で省エネを進めることも検討の余地があります。

ひとつは常温超電導のように、いったん生産したエネルギーを「動力から電気、電気から動力」と変換して永続利用できれば、エネルギー生産量は抑制できます。すでに一部のハイブリッド車ではこの技術が使われています。

またロシア産のメタル供給が制約されることを考えると、こうした金属需要に依存するEV(電気自動車)よりも、内燃機関を利用できる水素エンジン車が、ロシア産資源の供給制約には強い面があります。水素の生産、蓄積にはまだ技術開発の余地が大きいとしても、長期的には電力需要削減の中で脱炭素化を進める手段になりうると考えられます。内燃機関の技術に優位を持つ日本向きと考えられます。

Next: 改めて注目される「国境炭素税」。矛先は日本?

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