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急反発の日米株式市場に死角はあるか?「バラ色」をすべて織り込み急騰、ドットチャートで読む米FRBの腹の内=新天地

16日のアメリカ株は「FOMC結果を織り込み済み」として買いが膨らんだ。ドットチャートの分布図では「タカ派」が5人今年2.25%以上の金利引き上げを行うべきと考えているわけで、これに従えば今年のどこかで過去20年間なかった0.5%の利上げもありうる、と。この辺は早いペースの利上げが必要だという、一部参加者のかなり急進的な「タカ派的な」考えが透けて見える。本来これらは株価引き下げ要因なんだけど、中国問題とウクライナ問題の明るい兆しがちょうどFOMCに重なって上げ幅を拡大した面が大きい。昨日の段階では「バラ色」をすべて織り込んだかのようだ。(『新天地の株式投資日記』)

【関連】2022年、NYダウは「いつ」下げに転じるか。ラウンドトップ形成後に急落? QTと出来高で“株高の後”を読む

※本記事は有料メルマガ『新天地の株式投資日記』2022年3月17日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。実際に配信されたサンプル号もお読みいただけます。

プロフィール:新天地
祖父の影響で子どもの頃から株の売買を行う。証券会社で自己売買業務を経験後に退社、現在はデイトレーダー。メルマガでは主に脱初級・中級者向けに、東証・NYの市況(市場雑感)、相場の考え方、取引手法などを解説。一般に書かれることが少ない空売り戦略や取引アルゴリズムに関してもプレーヤーの立場から丁寧にフォローする。

FOMC通過で株価急騰、ただし不吉なのは逆イールド (3/17 5:40配信)

NYダウ:3万4,063 +518(+1.55%)
NASDAQ:1万3,436 +487(+3.77%)

アメリカ国債10年利回り日足(SBI証券提供)

アメリカ国債10年利回り日足(SBI証券提供)

アメリカ国債5年利回り日足(SBI証券提供)

アメリカ国債5年利回り日足(SBI証券提供)

短期中期共に金利は上昇。見てほしいのは5年ものと10年ものの利回りがほぼ並んだこと。時間帯によっては5年もの金利が10年もの金利を上回る「逆イールド(より短期の国債の利回りがより長期の国債の利回りを上回ること)」が発生する場面もあった。何回か書いたけど逆イールドが発生すれば必ず株価指数が下がるというわけではないが、大きな指数の下げが発生する時多くがその半年から2年くらい前にかけて逆イールドが発生している(ITバブル崩壊やリーマンショックなど)。非常に不吉な現象。逆イールドについてはまた改めて説明します。昨日については逆イールドは問題視されなかったわけだが…。

NYダウ日足(SBI証券提供)

NYダウ日足(SBI証券提供)

NASDAQ日足(SBI証券提供)

NASDAQ日足(SBI証券提供)

25日移動平均まで戻ったことになる。

NYダウ日中足(SBI証券提供)

NYダウ日中足(SBI証券提供)

NASDAQ日中足(SBI証券提供)

NASDAQ日中足(SBI証券提供)

アメリカ株には珍しく、ダウとナスダックの日中足がほぼ同一の動き。FOMCを睨んだ動きが見える。

16日のアメリカ株は大きく上げて引けた。

前週までの下落で金融引き締め方向への悪影響や戦争の悪影響が織り込まれたと考えた向きが買い戻しや買いポジションの増加に動く。さらにFOMCが終了すると、金利引き上げを見て株価が下がる場面があったものの、金融政策声明の内容や「ドットプロット」が過度にタカ派ではないと判断。「FOMC結果を織り込み済み」として再度買いが膨らんだ。

FOMCは市場の大方の予想通り0.25%の利上げに踏み切った。利上げは3年以上ぶりになる。

今回は「ドットプロット」(FOMC参加者の政策金利の予想を無記名で公表するもの)の2回に1回の公表回で、これによれば今年は後6回利上げ予想が中央値。1〜2月の段階ではもっと大きな利上げ予想もあっただけに「みんなほっとした」水準の利上げ予想になるかな。過度にタカ派が増えたということはなかった。

さらにあと3つ相場を押し上げた要因が、ウクライナ戦争の和平期待と、それもあっての原油価格の安定、そしてそれらとはまったく別に中国ADRの上昇。

伝えられるようにロシア側は「明らかに攻めあぐねる」なかで痛みに耐えかねて「名誉ある和平」(逆に言えば実利は得られない)を選ぶのではないか?という期待が出てきた。「ウクライナが中立維持」することを条件に和平の見通しが大きくなったのではないか?と。もちろん、ロシア側は「時間稼ぎをすれば軍隊を立ち直らせる」ことがしやすいのも確かで過度の和平期待は危険かもしれないけど。

和平期待や投機筋の損失覚悟の手仕舞い売りもあって原油価格がブレント原油が100ドル割れ。WTIも95ドルを下回るなど原油価格が下げ方向になったことでインフレへの警戒感が薄らいだ。

WTI 日足(SBI証券提供)

WTI 日足(SBI証券提供)

さらに昨日の日本時間の2時20分頃に出た、中国政府の大きな政策転換と言える中国企業のADRの海外上場維持を認める発言。これを受けて例えばアリババが実に36.6%高、ピンデュオデュオが56%高するなどとんでもない上昇幅を記録し市場心理好転にも役立った。

もちろん、昨日の相場雑感にも書いたけど、一言で上場維持を認めるというけれどアメリカの金融当局、特に中国企業のADRについてその脆弱性(中国政府が一言言うだけで恣意的に価値が急減する、ひどい場合には紙切れになってしまう。DIDIが好例)について強く問題視するSECの上場維持条件を全て中国政府が呑めるか?というと、まだまだ解決すべき問題は多いのだけれど。

ひとまず「大きな方向転換だ」と考えた投資家が中国のADRに反発狙いの買いや空売りのショートカバーを入れたことで軒並み大幅高となった。

<売買代金上位>

売買代金上位にはいつものメンバー、テスラ、AMDとエヌビディア、GAFAMが並ぶ。

「金融政策を織り込んだリスクオン」と言うことでテスラ4.8%高、エヌビディア6.5%高、アップル2.9%高、アマゾン3.9%高、メタ6%高、アルファベット3.2%高。

16日の特徴はここに中国銘柄のADRが食い込んできたこと。アリババが売買代金3位で36.6%高、JDドットコムが10位に入って39.3%高。13位にピンドュオドュオが入って56%高するなど中国株急上昇の嵐が吹き荒れる相場になった。

そのほかニーオ25%高、百度39%高。百度までが売買代金21位に入る大盛況というか異常な大商いになった。

<リスクオンの流れ謙虚>

リスクオンの流れは先週まで売り込まれてきた「まだ若い売上が立ってないグロース」にも顕著でブロック12%高、スノーフレーク16%高、ペイパル7%高、ショッピファイ12%高。特にフィンテックを中心に大きく戻した。

このあたりはマネーゲームの様相もかなり強い。毎日10%を超える価値の上下が起こるのはおかしいわけで、上げ下げの激しい、毎日方向が変わる荒れた相場つきが続く。

Next: 「インフレは一時的」は誤り。ドットチャートで読む次の注目点

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