コロナ禍で増えた「強制貯蓄」
また黒田総裁は「家計の値上げ許容度の改善」に繋がる理由として、「コロナ禍における行動制限下」で蓄積した『強制貯蓄』」を挙げています。
この「強制貯蓄」にもツッコミの入る余地がありまして。
コロナ禍で蓄えを増やすのは将来に不安があるためです。この不安は自分の意志とは関係なく「強制」されたため、「強制貯蓄」が生まれた、と。
でも、経済学の教科書にある「強制貯蓄」は少し意味合いが異なります。モノの値段が上がった時、「今まで通り買うのを止めて、おカネ貯めとこ」となる現象です。
例えばパンが100円から200円に値上がりしたとき、本当なら2個買いたかったのだけど、値上がりしたので諦めて1個にしておこう、なんて場合です。
日銀がこの辺を意図的に混同させているのかは不明です。でも、真面目に日銀からの言葉を理解しようとするほど、アタマの中は混乱します。
少なくとも分かり易さや透明性といった観点からはイマイチです。
「ご飯論法」での円安容認
これは冒頭の「許容度の改善」などでも同様です。
インテリ層が行いがちな、敢えて挑発的な表現を用いることでツッコミを受けつつ、そのツッコミを詭弁や修辞などで言いくるめて挑発を滑稽化させる、そんな風にみえます。
「朝ご飯(食事)はとったが、ご飯(お米)は食べてない」の「ご飯論法」と被っちゃうんです。
中央銀行の存在感の大きさが日本国債市場から生気を奪いました。そして今度は円相場を無秩序化しつつあります。「ご飯論法」で円安を肯定されては、反論しようにも「暖簾(のれん)に腕押し」です。
ということで今朝のドル円は132円台突入。市場心理として「あと10円くらい円安でも」という恐怖心が俄かに高まって来る動きです。
『徒然なる古今東西』(2022年6月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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