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参院選自民大勝利は日本にとって黄金か鉛か?岸田政権「無選挙の3年」に潜む危うさ=山崎和邦

「新しい資本主義」の投資枠拡大に多少の期待

岸田首相の「資産所得倍増プラン」は、基本的には良い着想であり、資産所得拡大を通して消費が増えるはずであるから、併せて賃金上昇政策を進めれば、GDPの6割を占める消費が増えるはずであるから、GDPは間違いなく成長幅を増す。高度成長期の再現も夢ではない。

しかし、岸田首相は資本市場の流通市場に対して無知であることが明白であるから、ブレーンがちゃんとしていなければならない。

個人資産を、全世代的に貯蓄から投資へシフトさせる。これは大変良いことであり、個人金融資産のうちの、現預金に占める比率が1000兆円もあるということは、先進国で日本が唯一の国である。それをむしろ長所として生かして、その分のたとえ5%でも証券市場に流入させれば、アベノミクス大相場の期間の外国人投資家の買い越し額(買った金額-売った金額)の2倍を超えることになる。そうなれば、本稿が以前から言っていた「日本株式市場の地殻変動」が起こる。日経平均は万単位で何度も上に変わる可能性はある。日経平均4万円や、5万円は、地殻変動を起こせばそれだけであり得る。

そうすると、金融資産を持つ者と持たざる者との格差が拡大するではないかという批判は当然起こる。有効な政策には副作用が起こる。そういう細かいことに気を配る必要はない。岸田さんは「人の話しを聞く特技」と言っても、そういうことに耳を傾けていたら物事は進まない。

鄧小平が40年以上前に言ったように「余滴が裾野に広がる」という考え方を通した方がいいだろう。ただし、個人金融資産を投資へシフトさせると言っても、株式売買が盛んになるだけではあまり意味がない。これは流通市場の売買が盛んになるだけであって、喜ぶのは証券会社と証券取引所だけだ。時価総額が増えるようにしなければならない。ということは、企業の在り方を改善しなければならない。幸い、日本企業の稼ぐ力は、今、過去最高に高まっているとも見える。

「法人企業の売上高経常利益率は戦後から2012年頃まで1~4%で推移していたが、2021年は8%を超える見通し」

-出典:武者陵司著「日経平均は4万円になる!」(宝島社新書)

そういう状況であるから、日本の最悪期は10年前に終わったということを、資家にも投資家以外の国民にも信用させる。韓国以下になった低賃金を改めて、円安は日本企業に有利であることを知らしめる。世界に類のないようなビジネスモデル(例えば、平凡ながら総合商社などはそれだ)を国民に知らせしめ、「感情」よりも「勘定」を重んずる理性的に明るい将来を国民に理解させる。その具体策を「NISA」の拡大などというママゴト的な小規模なことでなく、大幅にいくらでも考えられるはずである。

預貯金「1,000兆円」をGDPの流れの中に戻す

それは預貯金を投資に向けることである。投資(I)が貯蓄(S)とイコールになることを経済学で「IS(アイエス)バランス」と言うが、貯蓄である間はGDPの流れの中からの「漏出」であり、意味がない。これを投資に向けなければいけない。ところが、その分が先進国の中で日本は一番遅れている。株式投資に対する分がアメリカで現預金の中の37%に対して、日本は11%にしか過ぎない。イギリスとドイツも20数%ある。これにはそのように国が仕向けたという制度もある。

元々、400年前に欧州から新大陸に渡った投機家たちが、アメリカを作り、その移民たちの国であるから、アメリカは発生史的に特別な意味があったとはいえ、アメリカもイギリスもドイツも、全ては国家に政策があった。

ところが、その国家の政策といっても、健康寿命から平均寿命までの平均9年間の老齢者が持っている現預金は、150兆円ぐらいあると推定されている(日銀の資金循環統計)。その150兆円弱を相続しやすい新制度を作り、投資市場に向かわせることが肝要である。上場企業のほとんどが実行している、従業員持ち株プランなどの優遇も、その一つだろう。アメリカで言う401kである。

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