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日本は“老衰の30年”へ向かうのか?賃金と物価の上昇のスパイラルが起きない活力を失った社会の悲惨な末路=山崎和邦

現在の日本の経済は、賃金も物価も激しく上がっているわけではなく、インフレは深刻化せず、証券市場も混乱していない。しかしこれは良いことではない。もはや日本経済は老いて活力を失ってしまっているのだ。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2022年8月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に購読をどうぞ。

賃金・物価のスパイラルが起きない脆弱な日本経済

賃金・物価のスパイラルが起きない現象は、インフレの深刻化で経済が混乱するリスクが小さいし、証券市場が混乱するケースも小さいが、それだけ活力に欠けるということである。活力のあった時代の日本はそうではなかった。

例えば、73年秋に第一次オイルショックが起きて、5年間で原油が20倍になった時、1960年以降の池田勇人内閣の所得倍増計画を理論的に支えた下村治氏は、直ちに「ゼロ成長時代に入った」と言ったが、まだ日本経済には活力があり、第一次オイルショック発生の翌年74年には、消費者物価指数が20%を超えて春闘の賃金上昇も33%になった。この状態を福田赳夫は“狂乱物価”と呼んで、これが標準語となった。

今は、そのような春闘による大幅な賃金の上昇もないし、強烈なインフレもない。穏やかでいいと言えばいいが、それだけ力強さがなくなっているということである。

これは生産物市場の環境が当時とは異なっていることがその要因の一つであり、日本は欧米に比べて企業が製品物価を上げる力が弱くなってしまった。

もう一つは、日本は欧米諸国に比べて労働組合の交渉力が大きく低下し、労働組合側からの圧力で、当時のように大幅の賃金上昇を実現させることが難しくなってしまっている。

経営者は、内部留保は厚くして、利益余剰金を貯める一方である。安倍内閣成立時、12年12月には、第一市場の企業内の利益剰余金は、合計200兆円だったが、今は480兆円を超える。

それを賃金アップに使わせるように、利益剰余金に対して課税するというのが岸田首相の一案であった。しかし、株式市場の反乱に遭遇すると、直ちに「そういう選択肢もあると言っただけ」ということで曖昧にしてしまった。

賃金・物価のスパイラルの上昇現象は、日本では起きない。FRBのパウエル議長は賃金・物価スパイラルは起きうるとしながらも、急激な賃金上昇率は持続可能ではないとして、インフレと賃金上昇の両方を利上げで抑制する意向を示した。

証券市場にとっての好悪は別として、日本経済の活力が落ちたことには間違いない。

数値でわかる日本の活力低下

具体的に日本経済の活力をマクロで示すと、代表的な数値で言えば下記の通りである。

1:【賃金】

2000年を100として、現在の日本は100(韓国150、スウェーデン140、米・英・独は120~128)OECDの調査

2:【GDP】

2000年を100として、日本は今も100(ユーロ圏は200、アメリカも200)IMFの調査

3:【国際競争力】

平成バブルの真っ最中、レーガン中曽根の時代、日本は競争力世界1位、21世紀に入った途端に23位、今は31位。世界競争力年鑑による調査

4:【半導体の世界シェア】

20世紀末頃には日本は50%、現在は8%。アメリカは1998年に世界シェア38%、現在は50%。経産省調査

このことは既報で述べたことがある。重要なことだから再度、列挙した。

Next: “躍進の30年”となるのか“老衰の30年”となるのか?瀬戸際に追い込まれた日本

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