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モノマネ中国の時代を終焉させたアリババ、テンセント、Zoomの台頭。中華圏スタートアップがシリコンバレーを越える日=牧野武文

シリコンバレーを真似る時代は終わったのか?

このようなタイムマシンモデルは、起業を考える時、新規ビジネスの動向を考える時に極めて重要な視点です。中国がCopy to Chine=中国タイムマシンモデルをしている間は、テックビジネスに関してはシリコンバレーを注視していれば事足りました。しかしCopy to Chinaの時代が終わると、シリコンバレーだけを見ていても新規テックビジネスの動向がわからなくなりました。

そこで、ある人から「タイムマシン2.0」という考え方を教えていただきました。簡単に言うと、これからは中国がテックビジネスの中心地であり注視をする必要がある。さらには東南アジアからもユニークなテックビジネスが登場しているので、東アジア全体をウォッチする必要がある。東アジアで生まれたビジネスを日本で模倣し、タイムマシンモデルで成功できるという考え方です。いわば、Copy from Chinaという考え方です。

私も大筋では共感できる考え方なのですが、なんとなく違和感が残りました。それは新規ビジネスは、土地から生まれるものではなく、人から生まれるものだからです。百度の創業者ロビン・リーは中国で創業をしましたが、ビジネスのヒントを得たのは明らかに米国です。北京だけを見ていたら、突如として突然変異のように百度が登場したことになり、百度のビジネスというものが理解できなかったでしょう。

実際、今の起業を目指す中国人たちは、中国と米国、東南アジアを自由に行き来をして、ビジネスを構想し、最も有利な市場に着地をして起業をするということを行っています。シリコンバレーか中国かという視点ではなく、よりダイナミックな動きの中で新しいビジネスが生まれてきているのです。

今回は、中国と米国を行き来をして新規ビジネスを起業した例を4つご紹介します。そのストーリーを読んでいただき、テックビジネスは国境を越えたダイナミックな動きの中で生まれてきているという視点を持っていただければと思います。

シリコンバレーの強みは多様性

シリコンバレーの強みは多様性を受け入れることです。優秀なスキルを持っている人間、優れたアイディアを持っている人間であれば、その人の国籍がどこであっても拒むことはありません。実際、米政府は中国を目の敵にしてデカップリング政策を進めていますが、シリコンバレーではたくさんの中国人エンジニアが働いています。米国の大学ではたくさんの中国人留学生が学んでいます。そのため、世界中から優秀な人材とアイディアが集まってきます。だから強いのです。

以前、「シリコンバレーの田舎者」という言葉がありました。シリコンバレーの住人はシリコンバレーのことしか関心がなく、外の世界に目を向けないということを揶揄した言葉です。しかし、それでも問題はありませんでした。なぜなら、テックに関しては、シリコンバレーは世界の中心であり、世界を濾過したエッセンスだったからです。シリコンバレーを見るだけで、世界がわかるのです。

今、シリコンバレーの多くのテック企業の人種比率を見ると、いわゆる米国白人の割合が50%以下になっている企業がほとんどです。中国人やインド人、東南アジア人、南米人などが働いている姿はごく日常的な光景です。特に、インドはまだビジネス環境が脆弱なこともあって、米国に残るインド人が多く、グーグル(アルファベット)やマイクロソフト、アドビ、IBMといった主要企業のCEOをインド人が務めるようになっています。

米国白人と言っても、数世代前をたどれば、イタリア、アイルランド、ポーランド、ウクライナといった欧州各国の移民やその子孫であり、そもそもが多様です。この多様性に対する寛容さが米国の大きな強みになっています。

Next: Zoomの起業者は英語が下手な中国人

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