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モノマネ中国の時代を終焉させたアリババ、テンセント、Zoomの台頭。中華圏スタートアップがシリコンバレーを越える日=牧野武文

独自進化を遂げたテンセント

騰訊(テンセント)もこのようなタイムマシンモデルによる創業です。1997年頃、イスラエルのミラビリスが開発したICQ(I Seek Youの意味)というソフトウェアが世界中で流行をしました。PCにインストールして起動したままにしておくと、メッセージを送り合ったり、チャットができるメッセンジャーアプリです。さらにすごいことに、ビデオ通話も可能でした。もちろん、当時はまだ家庭用のインターネット回線が細く、1秒間に数枚、静止画が書き換えられる程度の動画でしたが、個人用PCで手軽にビデオ通話ができるというのは画期的なことだったのです。

中国では有志が勝手にパッチをあてた中国語版ICQが出回っていました。この様子を見ていて、潤訊という企業でポケベル技術の研究をしていた馬化騰(マー・ホワタン、ポニー・マー)は、より使いやすい中国オリジナルのICQの開発を企画します。しかし、その企画は却下されてしまいました。それでもあきらめきれないポニー・マーは、友人とテンセントを創業して、OICQ(Open ICQ)の開発を始めます。

これは名前からもわかる通り、ICQの模倣です。実際、ミラビリスとの間で知財関連のトラブルも起きました。そこで、ポニー・マーは、OICQに中国市場に合わせたさまざまな機能を追加開発していき、QQという名前に改め、独自の進化を遂げていきます。これにより、テンセントが成長をしていきます。これもタイムマシンモデルの好例になっています。

グーグルのモノマネからAI企業に転換した百度

百度もタイムマシンモデルにより成功した企業ですが、アリババやテンセントとは少し事情が違っています。創業者の李彦宏(リー・イエンホン、ロビン・リー)は、北京大学を卒業後、ニューヨーク大学に留学をして人工知能=AIの研究を専攻しています。しかし、当時はAIエンジニアとしての就職口は米国にもありません。そこで、インフォシークに入社をし、検索エンジンの開発エンジニアになります。

その後、2000年に中国に帰国をし、百度を起業します。百度のメインプロダクトは検索エンジンであり、主要事業は検索広告でした。その後は、グーグルを意識してグーグルの模倣をすることで成功をしました。これもタイムマシンモデルのひとつになっています。

ただし、百度のタイムマシンモデルは完璧にうまくいったとは言えません。検索広告は、2012年頃にはすでに陰りが見え始めたからです。ロビン・リーはこう説明しています。「中国のネット市場は広大なので、米国よりも先にテクノロジーの限界がやってくる。米国のコピーテクノロジーだけでは、中国市場をカバーしきれない。その限界はイノベーションで超えていくしかない。これにより、中国のテック企業は米国のコピーを脱し、イノベーションを起こす企業になっていく」。

ロビン・リーは原点に立ち返り、百度をAI企業へと転換させていくことを始めました。それが自動運転技術「アポロ」で、すでに複数都市で、ロボタクシーの料金を取る試験営業を始めています。

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