米国の中長期指標の半分以上は持続的な高インフレを示していない
米国では景気の「山」と「谷」を公式に判定する全米経済研究所(旧経済企画庁が1960年に景気後退指数を組成する時に大いに参考にした先輩)は、米国はまだ景気後退はしていないと、2022年8月下旬現在で言っている。これはポジショントークに左右されない客観的データで言っているはずである。そして、注目すべきは中長期指標の半分以上が持続的な高インフレを示しているわけではない。
また、「コモディティ価格は1年前に比べれば大きく高騰しているが、最近では軟化してもいる。コモディティ価格がそれなりに安定した状態が続けば、消費者物価は多くの国で低下し始めるだろうし、顕著に下がる可能性もある」と言っているのは、例のジム・オニール氏(★注)である(週刊東洋経済誌9月3日号)。
(★注)彼は、20年以上前、BRICsという造語を生み出した人である。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長であり、英財務省の政務事務次官などを歴任したエコノミストである。筆者が不思議に思うのは、日本の株式市場全体で言えば益回りは8%ある。長期金利はゼロに近い。この異様な風景を諸外国がいつまでも見放しておくはずはない。また、米金利も長期金利が3%になっていることは、これは上限に近いか、既に上限を超えている。これがますます高金利になるということは考えにくい。そうなれば、NYダウも今から大幅に下がることも考えにくい。
筆者が中長期と言うのは1~3年を言うのであって、超長期5~10年で言えば日経平均は5万円、あるいは10万円と言えないこともない。アメリカでは1929年の大恐慌前の高値を抜くのに25年かかった。日本は1989年の大納会の高値を33年かけても抜けないどころか、日経平均で言えば、その7割前後である(もっとも、上場銘柄数が大きく増えたから時価総額全体で言えば当時を遥かに超えてはいる)。
<山崎和邦の投機の流儀vol.535 9/4号>
第1部:当面の市況
(1)市況コメント:一足一刀の間境で、相場と対峙したい
(2)海外勢、8月第4週に日本株売り越し
(3)4日続落、諸株一斉に安い中で、東電だけが10%高をした背景
(4)8月市況を振り返れば・・・
(5)米国に比べて日本株は底堅い
(6)再び、FRBの動向について惑う
(7)遣隋使ならぬ遣唐使、これをもじって岸田氏は「検討使」と揶揄されかねない。この岸田首相は国政選挙空白の「黄金の3年間」を使い切れるか?
(8)FRBの使命は、通貨価値の安定と雇用発展である。株式市場の安定ではない
(9)FRBが追加利上げに踏み切れば、株式市場は最近の上昇分を全て失う恐れがある
(10)「恐怖指数」が急騰した月末、構造的には割安
■ 第2部:中長期の見方
(1)FRBは今後、どういう行動をとるか?
(2)「国策に売りなし」─「貯蓄から投資へ」
(3)原油価格は下落に向かう
(4)世界経済は1970年代のようなスタグフレーションに向かっているのか?
(5)プーチンの人柄形成について要約する
(6)中国の台湾包囲演習が意味するもの
(7)台湾有事は日本にも当然、影響を与える
(8)中国の台湾との問題
(9)台湾・尖閣諸島・北方領土の問題
(10)ウクライナの要請を断り、武器輸出の機会を逃したと河野デジタル相は言う
(11)「安倍元首相の国葬」について
■ 第3部;超長期の見方
(1)超長期に見れば、日本株は決して高過ぎはしない。モノの見方には(A:循環的な見方)と(B:構造的な見方)とがある
(2)世の中が「不況シナリオ」に染まりつつあることへの用心
[ 来週号に回す項目 ]
〇「会社は誰のものか?」というおかしな議論
〇「人材」「人財」「人罪」「人在」
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『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2022年9月4日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。