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ベトナム人労働者、円安で“日本離れ”が顕著に。ベトナム側は実習生の“税免除”を要請も日本国内からは「厚かましい」の大合唱と深まる分断

技能実習生で最も多いとされるベトナム人労働者の間で、ここに来て“日本離れ”の兆候が顕著に見られると報じられ、大きな議論を呼んでいるようだ。

実際、コロナ対策のための厳格な水際措置の影響もあり、2021年におけるベトナム人の海外労働者派遣数は、台湾が1位になったとのこと。また、このところは円安の影響で、ベトナムドンに対する日本円の価値は年初から20%近く下落し、円建ての月給を本国へ仕送りすると目減りする事態に。そのうえ、ベトナムの最低賃金も上昇しており、日本との格差が急速に縮小しているという。

また技能実習生は、日本国内で住民税や所得税、年金、社会保険料を支払っており、そのため母国で事前に聞いた収入額と実際の手取りの差が大きいことも、敬遠される一因となっているとのことだ。

いっぽうベトナムは最近、オーストラリアと農業労働者の派遣・受け入れで協定を結んだといい、こちらは1年のうち9か月働き3か月は自由行動というスケジュールで、月給は3200~4000豪ドル(30万4,000~38万円)と、日本との賃金格差は圧倒的だという。

相次ぐベトナム人労働者への“人権侵害”

今月2日には24年ぶりの水準となる1ドル=140円台まで値下りし、一時は144円台まで下落するなど円安が止まらない日本。

アジア各国と日本との経済的な差に関して、厳然たる違いが存在するとの認識はもはや遠い過去の話のようで、今回取沙汰されているベトナムとの間では、昨今の急激な円安の影響もあってか、いわゆる「ビックマック指数」がついに抜かされてしまったと話題になったばかり。ビックマック指数が各国間の経済力比較において有効なものではまったくないといった話はおいとき、SNS上では「日本も随分安い国になった」と嘆く声が多く溢れたのだ。

水際対策の緩和で最近徐々に増えてきた外国からの観光客からすれば、この円安傾向は大歓迎といったところのようだが、同じ海外からの外国人でも稼ぎに来たいと思っている向きにとっては、円安のうえに物価高騰に見合った賃上げがほとんど進んでいない日本は、まったく魅力のない場所となってしまっているようだ。

さらにベトナムからの労働者といえば、その受け入れ側による不当を通り越して人権侵害とも言えそうな扱いが、問題になることもしばしば。

今年2月には岡山市内の建設会社で、働いていたベトナム人の技能実習生に対して建設資材を投げ渡される、安全靴で胸を蹴られるなどといった数々の暴行があったことが判明し、くわえて会社がそのことを隠蔽するよう指示していたことも明るみに。「日本の恥」との批判が大いに渦巻いたこの不祥事だが、その後元従業員4人が暴行と傷害の疑いで書類送検されたものの、今年8月には全員が不起訴となったという。

また同時期には、田中義剛氏が社長を務める「花畑牧場」で、ベトナム人従業員に対して雇い止めをしようとしたのにくわえ、ストを主導した人物に200万円の賠償請求を求めていたことも発覚。こちらはメディアが大いに取り上げたこともあって、最終的に会社側が不適切な対応をしたことを認め、謝罪したことで和解が成立したようだ。

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とはいえ、こういったベトナム人労働者らへの不当な扱いの数々が本国にも漏れ伝わり、今の“日本離れ”に繋がっている可能性も無きにしも非ずといったところだろう。

ベトナム側は実習生の“税免除”を要請

いっぽうで技能実習生も含めたベトナム人労働者だが、ここ近年はその一部が窃盗などの犯罪に手を染めるようになるといった事案も多く報じられるところ。

2020年には北関東で相次いでいた家畜の窃盗事件に関与しているとして、ベトナム国籍の技能実習生複数名がと畜場法違反容疑で逮捕。捕まった者のなかには、「豚を切って内臓を取った」と容疑を認める者もいたものの、解体した客観的な証拠は見つからず、さらに窃盗容疑との関りも詰め切れなかったようで、最終的に前橋地検は全員を不起訴処分としている。

さらに今年6月には、山梨県内で出荷目前の桃が大量に盗まれ、後日それらと思われる桃がメルカリに大量出品されていることが発見されて大騒動となったが、これもその後の8月にベトナム国籍の男性ら3人が関わった疑いがあるとして逮捕。全貌解明に向けて、今も捜査が続いているようだ。

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もちろんすべてのベトナム人が悪人だというわけではなく、くわえて犯罪行為に至った背景には、日本へ働きに来たはいいものの、コロナの影響で受け入れ先の企業からあっさりクビを切られてしまい、次の仕事も見つからず母国にも帰れずに……といった事情もあるようなのだが、とはいえここまで悪行が相次げば、ベトナム人全体への心象も悪くなるのも避けられないといったところ。

実際、先週都内でベトナムの労働・傷病軍人・社会事業相が加藤勝信厚生労働相と会談し、技能実習生にとって大きな負担となっている住民税・所得税に関して、これを免除するように要請したと報じられたのだが、それに対し件の窃盗事件などを引き合いに「厚かましい」と批判する声も少なからずあがっているのだ。

要は、稼げない日本に来て、食うに困って犯罪行為に走られるのであれば、いっそのこと日本以外の国に行ってもらったほうが、ベトナム人も日本人もハッピー……といった論調も、幅を利かせつつあるというのが今の状況。そもそも技能実習生制度は、国際貢献や国際協力といった崇高な理念も掲げられたうえで、国が推し進めて始まったものだが、その末路が双方から「ノー」を突き付ける形になるというのは、なんとも寂しすぎる話としか言いようがない。

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