イギリスポンドが急落しており、欧州発の経済危機の予兆になっているのではないか?とも噂されています。急落の要因を見るとともに、いま世界経済はどのようにして動いているのか?株価も軟調な中、どこで大きな暴落があるのか?という点を考えたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
急激に進むポンド安
ポンドが対ドルで4%以上下落で、史上最安値を更新したということでニュースにもなりました。
なぜポンド安になったのかというと、新政権トラス首相が就任しまして、その新政権の方針が大きく影響していると言われています。
政策金利を引き上げるという世界的な流れがあります。
これはインフレ退治のために必要であると言われているのですが、一方でトラス首相は大幅な減税策を打ち出したのです。
減税策、これはいわゆる財政政策になるのですが、こちらはインフレをむしろ加速させるものだと見えるわけです。
従って、
・かたやインフレを抑えよう
・かたやインフレがとどまるところを知らないようになってしまう
ような政策をとっているという、ちぐはぐな動きというのが、英国の政治に対する不信感を引き上げたと見られているわけです。
このことによって大きくポンド安になりました。
ただこの年初来のチャート見ていただきますと、確かにここで大きくポンド安に傾いたんですが、そうでなくてもじわじわとドルに対してポンド安が進んでいたのです。
実はこれは、あらゆる国で見られている状況でして、これがドル円です。
皆さんのご承知の通り、ドル円は年初からすでに25%円安に進んでいます。それからユーロと比較しても、これもまた20%近くユーロ安が進んでいます。先ほどのポンドもありましたし、韓国のウォンも実はウォン安ドル高になっているわけです。
円だけが安いというように報道されています。
しかし世界的に見ると、実はこの円安ドル高というだけではなく、ひたすらドル高、ドル独歩高という状況が続いているわけです。
円安になっている理由として、日米金利差が言われています。
FRBが金利を引き上げて、ドル金利が高い中で日銀は金利を引き上げない。
- 金利のより高いドルにお金が集まっている。
- 円からドルに逃げて、ドルにお金が集まってる。
と言われ方をしますけれども、実は円だけではない。
その他の国々の通貨も売られているわけです。
金利差があるのかいうと、実はアメリカに追随するようにイギリス・欧州・韓国(グラフにはありませんが)も政策金利を引き上げているのです。
確かにまだアメリカには及ばないというところもあるのですが、ちゃんと追いすがるように上げているのです。
金利差という意味では、大きく変わってないわけです。
一方で日本だけ利上げをせずに、その差はどんどん広がっているのです。
しかし先ほど見ていただきました通り、実は通貨に対しては、そんなに変わらない。
金利を引き上げようが、引き上げ前と変わらない状況になっているのが見てとれると思います。
すなわち、今ドル高になっているのは、もはや金利差の話ではなくなっているのではないかということが、これらの事実から読み取れるわけです。