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英ポンド急落は世界恐慌の兆候か。欧州経済の三重苦と“ドル独歩高”が呼び込む絶好の買い場とは=栫井駿介

ドル高の要因は「リスクからの逃避」

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ここで大きく話が変わります。

「今までお金って、金利の高い低いによって動いてるんじゃなかったの?」というのが大きな見方かと思うのですが、実はそうではないということが明らかになってきました。

先ほどのイギリスの動き、トラス首相がおかしなお金の政策。

このトラスさん、経済分野は明るくないと言われています。そんな中でおかしな政策をとったことで、イギリスポンドが売られているわけです。

これは、どういう状況なのか。投資家の心理になって考えてみるといいかもしれません。

とにかく今株もすごく下がっている中で、どういう心理かというと、株価が下がるとき・軟調なときというのは、投資家はとにかくリスクを避けようとする。そういう傾向があるのです。

実際に今、経済を見渡してどういう状況になっているか考えてみようと思います。

<景気後退懸念 → 株式からの逃避>

まず、とにかく景気後退懸念。

今、アメリカではテクニカルリセッションと言われるように、2四半期連続GDPがマイナス成長になっていたりします。

実際にアメリカはコロナ禍で、好調だった経済が後退しつつあるというところから、まず株式からお金は逃避している。

だから株価が下がっているわけなのです。

<金利上昇 → 不動産からの逃避>

また金利の引き上げ。

こちらは不動産に非常に大きく影響を与えるのです。

不動産というのはそもそも、借り入れを通じて買うものなので、金利が上がると不動産が買われなくなって、結果不動産価格が下落しやすくなる。

不動産からの逃避が起きています。

<インフレ退治 → コモディティからの逃避>

それだったら株・不動産以外のコモディティとか商品そっちに動けばいいと。

例えば金とかはその代表格。また石油とか、農産物。そういったところに逃げようという動きが起こることもあります。

しかしこれもまた金利が引き上がって、中央銀行がインフレを退治しようとしているわけですから、いやいや、インフレがなくなったら、コモディティの価格も上がらないよ。下がってしまうよね。ということから、コモディティからも逃避が起きているのです。

そうなると、株式・不動産もコモディティも全部駄目だということになると、キャッシュで持っておこうという話になるわけです。

ただキャッシュといっても、通貨がそれこそいろいろあるわけです。

日本円で持っておく、それからポンドでもっておく。ユーロで持っておくという選択肢があると思います。

<ウクライナ問題 → 非産油国からの逃避>

例えばウクライナ問題がありました。ウクライナ問題で今一番打撃を受けているのは、実はヨーロッパなのです。

ロシアから天然ガスや石油を多く輸入していたんですけれども、ロシアがいよいよ脅しをかけて「もう欧州には、西側諸国には原油輸出しない」「天然ガス輸出しない」というようなことを言っています。

そうなると、いよいよ欧州経済も冷え込みます。

これから冬になって(ヨーロッパの冬は本当に寒いですから)ガスがないということになると、かなり死活問題になってきます。

原油が取れないところ、あるいはロシアに依存していた西側諸国は、経済的に苦しいということになってきます。

<政治リスク → 政治不安国からの逃避>

さらには政治リスクというのもあります。

政治不安国からの逃避。先ほどイギリスの話をしました。イギリスというと、まだブレグジット前後から政治が安定しないのです。しかもトラスさんが経済に明るくないということが、早速露呈してしまったと。

このことからすでにブレグジットで、金融街としての地位を失いつつあります。そこでそういったちぐはぐな政策をとられると、いよいよイギリスも駄目だなということで、お金が逃げる。

つまり、ヨーロッパの国々からお金が逃げる状況になっているわけです。

じゃあどこにお金を置いておこうかと考えると、とりあえず(と言ったらなんですけど)消去法的に考えてドルです。ドルを持っておけば、まあ安心なんじゃないかというところです。

ドルを持てばいいという考え方は、まさに米国経済そのものの強さを表していると思います。

そもそもドルは、世界の基軸通貨であって、例えば急落することはなかなか考えにくいです。
世界最大のGDPを持つアメリカ。

イギリスのポンドよりも、当然アメリカの方が安定しているでしょうし、ユーロは(これがかなり大きいんですが)経済不安があります。

円も国際通貨としての役割をある程度果たしているのですが、日本とアメリカと比べたら、やっぱりアメリカの方が安泰だということで、そちらに行きます。他の新興国は言わずもがなです。

すると、アメリカ経済の強さが浮かび上がってくるわけです。

 

Next: なぜ米国はドル高を「黙認」するのか?アメリカ経済の特徴

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