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まもなく為替介入「2回目」発動か。残りの弾数と副作用、日銀が利上げできない4つの理由=矢口新

日銀が「利上げできない」4つの理由

ここに、円安(1990年8月以来となる148円台後半)、インフレ(8月の消費者物価指数:前年比+3.0%、コア指数:前年比+2.8%、9月の企業物価指数:前年比+9.7%)対策として、日銀が利上げをできない理由を繰り返しておく。

<利上げできない理由その1. 国内需要は大きくない>

GDPギャップはコロナ前の2019年10-12月期から2022年4-6月期まで11四半期連続でマイナス(=需要不足)。利上げでこれ以上需要を減らしても、インフレを抑えられないだけでなく景気をさらに悪化させるだけ。

<利上げできない理由その2. ゾンビ企業が耐えられない>

帝国データバンクは2022年7月、BISの「ゾンビ企業」の定義である「3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)1未満、かつ設立10年以上」に該当する企業を調査し、国内に約16.5万社の「ゾンビ企業」が存在すると推計した。

つまり、利益で利子が払えない企業が16万社以上存在する。利上げはそれらゾンビ企業を追い込むだけでなく、さらに多くのゾンビ企業を創出する。

また、全企業の6割以上が欠損法人(赤字で税金を払えない企業)だ。

<利上げできない理由その3. インフレは海外発>

日本はエネルギーのほとんど、食料の大半を輸入しているので、国内での利上げは無力。

<利上げできない理由その4. 財務省が許さない?>

「財務省のホームページには、普通国債残高は1,000兆円を超えており、金利が上昇すれば利払費が大幅に増えることになります」と明記されている。

日本の経済政策は事実上、打つ手がない状態となっている。税制改革など抜本的な見直しがない限り、過去20数年の停滞から、今後は坂道を転げ落ちる状態となっていく。貿易赤字、円安、インフレのスパイラルがそれを加速させる。

英企業年金の危機は、年金や保険、預金も安全確実ではないことを示唆している。保証や保障を物語る政府は、民間資産を当てにしているだけなので、厚かましい限りだ。

今さらながらに、自分の身は自分で守るという覚悟が必要だろう。

過去1世紀で最悪のリターン

ドル円は2022年10月14日、1990年8月以来となる148円台後半まで上昇した。

イエレン米財務長官は14日、米連銀の急速な利上げに伴うドル高が、ドル建て債務を抱える新興国を圧迫しているとの批判に対し、「市場で決定される為替レートがドルにとって最良の体制であり、それを支持する」と反論した。

しかし、利上げは当局が決定したもので、市場は従っているだけだ。政策金利とは誘導金利だが、市場はその誘導に逆らうすべを持たないものなのだ。そして、利上げは通貨を上げる手段の1つでもある。

米ドルの独歩高は、また、各国に輸入インフレを引き起こす一方で、米国からの外貨建て投資を通貨安という損失で悪化させている。世界中でほぼあらゆる資産が売られる中、各国の投資家にとっては米国の短期金融資産という逃げ道があるが、米国の投資家にとっては全面安なのだ。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)グローバルリサーチは14日、保有資産の60%を株式、40%を債券に投資する伝統的ポートフォリオの投資家たちが、2022年は過去1世紀で最悪のリターンに直面していると発表した。株価、債券価格のどちらもが下落しているためだ。債券市場からは多額の資金流出が続いているという。

2022年はインフレショックが金利ショックを引き起こし、それが景気後退ショック、信用リスク拡大と連鎖、加えて、欧州での戦争、エネルギー危機によって、あらゆる資産クラスで評価額が急落したとされている。

あらゆる資産クラスの評価額が急落、米ドル以外の通貨が全面安。過去100年間で最悪のリターン。つまり、今の我々が直面していることは、過去の経験則で乗り切れることではないのだ。

Next: 最悪のリターンはまだ続く?世界経済「正常化」は始まったばかり

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