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まもなく為替介入「2回目」発動か。残りの弾数と副作用、日銀が利上げできない4つの理由=矢口新

「正常化」はまだ始まったばかり

とはいえ、私の過去のブログを見ていただければわかるが、こうなることはある程度予測できていた。このブログは発行済みメルマガの1部を転載しているので、内容はすべてオリジナルのまま、後日になっての訂正や編集は行っていない。
※参照:矢口新の生き残りのディーリング:ブログ記事一覧
https://ameblo.jp/dealersweb-inc/entrylist.html

世界で今起きていることは、ここ10数年に起きてきたことの結果に過ぎない。

リーマン・ショック後の米連銀資産の急拡大、欧州から始まったマイナス金利政策、日銀の異次元緩和に伴う様々な金融政策、世界的な新型コロナウイルス対策としての経済の殺処分、そして、コロナ対策で止めた経済支援のための財政・金融両面からの巨大な資金供給。それらがインフレや貧富格差拡大(これは税制によるものが最も大きい)、社会不安につながってきた。

各国が採ったこれらの政策は、すべて過去100年どころか前代未聞のもので、常軌を逸していたと言える。つまり、2021年末までの世界の方が異常だったのだ。だからこそ、米連銀は「正常化」を急ぐとしている。

一方、日本には外貨準備を売る為替市場介入以外(あるいは税制改革以外?)に「打つ手がもうない」のだが、日銀は「異次元緩和を続ける」とうそぶいている。いずれにせよ、それだけでもドル高円安は止まりそうにない。繰り返しておくが、中長期の円安トレンドの主因は貿易赤字で、この貿易赤字、円安、インフレはスパイラル的に悪化する可能性がある。また、2年国債の日米金利差も4%を超えてきている。

米国に先立ち、2021年の後半からいくつかの国で利上げが始まっていた。理由はインフレだ。

米国でも数年前から随所でインフレの兆しが見られていたが、コロナ後の資金供給が火をつけた。そのため、2022年3月から利上げ、6月からは資金回収を開始した。

つまり、「正常化」はまだ始まったばかりなのだ。

マイナス利回りの債券が投資運用理論的には説明がつかないような超高値ならば、それに呼応した株高も同じような超高値だった可能性がある。仮想通貨も、NFTも、スパックも、不動産価格も同様だ。つまり、リーマン・ショック以降の一連の政策は随所でバブルを生んだのだ。

また、そうした超高値、超低利回りは運用難を産み、英国の企業年金のような確定給付型(一定の給付額を約束しているもの)は「異常な」リスクを取るしかなくなっていた。何しろ、それらの企業年金が大量に保有していた2061年償還の英国債のクーポンは0.5%しかないので、過大なリスクを取ることなしには、約束の給付ができなくなっていたからだ。

同年金はイングランド銀行の市場介入なしには破たんしていたと言われているが、同国債は介入時点で元本の24/100に値下がりしていたとされている。こうした運用難はどこの国の年金、保険、銀行なども同じなので、英国の企業年金の苦境は氷山の一角である可能性がある。

ベン・バーナンキ元米連銀議長がノーベル経済学賞を受賞した。同氏の米連銀議長としての在任期間は2006年から2014年だ。つまり、在任中に米住宅バブルは進展し、2007年8月にはサブプライム・ショックが起き、2008年9月にはリーマン・ショックが起きた。そして、同氏の金融政策がその後のバブル、インフレや貧富格差拡大、社会不安につながった。

世界の多くの国々が「リーマン・ショック後の資金供給の急拡大、ほぼゼロやマイナス金利政策、コロナ対策で止めた経済支援のための財政・金融両面からの巨大な資金供給」を行ったように、バーナンキ氏の政策は、弊害の大きさを超えて、世界の称賛に値するものなのだろうか。

10数年続いた異常な政策が過度なインフレを生み、そのために世界経済が壊れかけている。そこで、多くの国々が金融の「正常化」を急いでいる。その正常化もまた異常なスピードで弊害は避けられないのだが、まだ始まってから1年も経っていない。

これが世界の実情だ。「過去1世紀で最悪のリターン」が2022年だけで終わるとは考えない方いい。

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※本記事は、矢口新氏のメルマガ『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』2022年10月17日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に 今月分すべて無料のお試し購読 今月分すべて無料のお試し購読 をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

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image by: Leonid Andronov / Shutterstock.com
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相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』(2022年10月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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