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1000人超の研究者が失職へ。円安と累積赤字で加速する「才能」海外流出=矢口新

ドル円レートを決める3大要因

ドル円レートを決める3大要因を再度繰り返しておく。

1. 日本の貿易収支(円の実需の売買を示す)
2. 日米金利差(資本実需の動向を示唆する)
3. 投機的売買(取引金額的には圧倒的だが、保有期間に制限がある)

長期トレンドに与える影響は(1)(2)(3)の順番。短期的な動向では、まったく逆の(3)(2)(1)の順番となる。

これは短期的な動向は取引金額に左右されるが、長期トレンドは保有期間に左右されることを意味している。

これらを分析すれば、「現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している」というのが結論だ。

日銀が「利上げできない」4つの理由

日銀の黒田総裁は21年12月に物価上昇について「2%に及ぶ、もしくは超えるといった欧米のようなことになる可能性はまずない」と語っていた。

しかし、想定外の物価3%上昇が発表されたこの21日には、賃金上昇を伴う物価上昇が実現するように「金融緩和を実施していく」と語った。27-28日に開かれる金融政策決定会合では大規模緩和を維持する公算が大きいのだ。

黒田総裁の見解はともかく、日銀が利上げをできない理由についても繰り返しておく。

<1. 国内需要は大きくない>

GDPギャップはコロナ前の2019年10-12月期から2022年4-6月期まで11四半期連続でマイナス(=需要不足)。利上げでこれ以上需要を減らしても、インフレを抑えられないだけでなく景気をさらに悪化させるだけ。

<2. ゾンビ企業が耐えられない>

帝国データバンクは2022年7月、BISの「ゾンビ企業」の定義である「3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)1未満、かつ設立10年以上」に該当する企業を調査し、国内に約16.5万社の「ゾンビ企業」が存在すると推計した。

つまり、利益で利子が払えない企業が16万社以上存在する。利上げはそれらゾンビ企業を追い込むだけでなく、さらに多くのゾンビ企業を創出する。

また、全企業の6割以上が欠損法人(赤字で税金を払えない企業)だ。

<3. インフレは海外発>

日本はエネルギーのほとんど、食料の大半を輸入しているので、国内での利上げは無力。

<4. 財務省が許さない?>

「財務省のホームページには、普通国債残高は1,000兆円を超えており、金利が上昇すれば利払費が大幅に増えることになります」と明記されている。

日銀には大規模緩和を止める意欲が見られないだけでなく、意欲があってもできないのだ。円安を止める能力も介入以外にはない。また、その介入でも外貨準備をすべて使ったところで、効果は短中期的に留まり、長期的には阻止できず、信用力のさらなる低下と、打つ手が皆無になることしか意味しない。

日本を再生させるには、円安になれば貿易黒字になるような当たり前の姿に、まともな経済成長が見込める国に戻すしかない。だからこそ、私は税制改革を伴う構造改革が必要だと繰り返しているのだ。
※参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口新/ペーパーバック版Kindle Edition

さて、ここからの円安は「累積債務と円安で加速する才能流出」を懸念すべき水準となってきた。有期雇用の雇い止め懸念が一例だ。

Next: 1,000人もの研究者たちが失職する?円安で加速する「才能」流出

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