やがて現金は駆逐される?政府に睨まれるとお金が使えない世界が到来
各国が想定しているデジタル法定通貨は現金の法定通貨と並行して流通するようだが、コストや管理可能という面から、いずれはデジタル通貨に統一されていく可能性がある。
デジタル通貨に統一されれば、金融政策もデジタル通貨を通じて行われるので、金利が付けられるようにもなるだろう。
デジタル通貨に統一されれば、テロ資金やマネーロンダリングを含め、すべての資金の流れを国家が握ることになる。
そうなれば、現実に中国ではすでに起きているように、政府に睨まれると、電車にも乗れず、買い物もできなくなるようになる。
日本で使用されている交通系のデビットカードは現金の法定通貨の決済方法の手段の1つだが、それでも個人情報を提供して購入し、電車代だけでなく、コンビニや自動販売機でも使えるものだ。つまり、そのカードは、使用者がどこからどこまで移動し、どこの自販機でいくら使ったかを把握している。これをスマホのGPSやスマート家電の情報と一致させ、各地の監視カメラと一体化してAIで管理すれば、使用者の普段の生活の行動範囲が概ね把握できることになる。
テロリストが使用者を標的にすれば、そうした情報をハッキングすることで、簡単に目的を達成することができる。動くスマホとも称されるEVに乗っていれば、そのまま誘導先に連れて行かれるかも知れない。
同じことが、政府ならばもっと容易に望みの人たちを「確保」できる。現実に中国はすでに世界各地に「派出所」を儲け、欧州だけで数百人もの在欧中国人が当局に「説得」されて帰国していることが、欧州各国で問題視されているという。
政府の狙いは国民の「管理」だ
徴税、場合によっては徴兵を行う政府が国民の「匿名性」を容認することはない。政府の狙いは国民の「管理」だ。マイナンバー、その銀行口座や健康保険との紐付け、デジタル通貨、すべては管理を容易にするためのものだ。
以前のフェイスブックが提唱した「リブラ」は、大手カード会社を含む多くの有力企業が賛同し、流通量の100%を米国債で運用するステープル通貨とするなど、法定通貨を超える流動性の可能性と、各国当局の「管理可能」を超える匿名性があったために、各国政府が反対し、日の目を見ることはなかった。
デジタル法定通貨が現金に取って代わると、政府当局がその国のすべての資金の流れを把握し、管理できるようになる。権力者がそれを自分の権力維持のために恣意的に利用しないという保証はどこにもない。
そうした政府の管理を逃れるために暗号資産を頼ることは、事実上、FTXや他の取引所、ビットコインやイーサリアムなどの管理者たちを頼ることになる。
しかし、暗号資産の短い歴史に比較して、それらの管理者をめぐるスキャンダルの多さはどうしたものだろう?また、「リブラ」と違い、それら政府当局が認めた、あるいは放任しているものは、政府当局の「管理可能」をそれほど脅かすものではないとも言えるのだ。
便利な世の中になった。しかし、誰にとっても便利なものは、その便利さを最も有効に使える権力者に有利に働く。我々はそうした時代に生きていると言えるのではないか? ※2022年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
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』(2022年11月28日号)より一部抜粋
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