レバナス民は「炭鉱のカナリア」となった
2021年末から2022年にかけてにわかに出現したのが「レバナス民」と呼ばれる人々です。「レバナス」とは、「レバレッジ・ナスダック」のことで、ナスダック総合指数にレバレッジ(信用取引)をかけて、大儲けしようと考えたのです。
彼らの思想の背景にあったのが、「ナスダックは永遠に伸び続ける」というものでした。世の中のハイテク化はますます進み、GAFAMに代表されるハイテク企業の力は日に日に高まっています。過去のチャートを見ても右肩上がりが続いており、それがこれからもずっと続くと考えたのかもしれません。
しかし、いま考えるとわかるように、レバナス民の登場こそが株式市場における「炭鉱のカナリア」だったと言えます。世の中において「永遠に続く」ことはありませんが、彼らはそれを正当化しようとしていたのです。
過去、金融市場はバブルとその崩壊を繰り返してきました。日本の1980年代には「土地神話」と言われ、不動産価格はもう下がることはないと言われました。2000年前後のITバブルでは、世の中はすべてインターネットに取って代わられるような風潮さえありました。しかし、それらはいずれも幻想で、やがて現実に返る瞬間がやってきます。
ここまで解説したように、ナスダックの上昇は「金融緩和」と「コロナ禍でのデジタル偏重」に支えられていました。ということは当然、これらが終わると上昇も終焉を迎えます。
金融緩和が終了し、金利は上昇。一方で、コロナ禍は徐々に収束し始め、デジタルに対する需要の減少、ところによっては反動減が生じ始めました。2022年は、これまでイケイケドンドンだったAmazonやMeta(Facebook)も人員削減に踏み切っています。
下落が始まってからもナスダックに執着するレバナス民に対し、相場の流れを決める機関投資家の動きは迅速です。金利が上昇に転じると見るや、一斉にこれらの売りに回りました。これまでの上昇で相当に利益が乗っているでしょうから、早いところ利益確定してしまいたいという思惑もあると思われます。こうして、ハイテク株は大きく値を下げたのです。
「割安」「高配当」が席巻した2022年
ハイテク株に代わって好調を維持したのが、バリュー(割安)株と呼ばれる銘柄群です。これらは金融緩和の恩恵はあまり受けられませんでしたが、ハイテク株を売った資金の逃避先として重宝されました。株価が割安ということは配当利回りも高く、高配当銘柄もその恩恵を受けることになります。
以下が、投資信託の年間パフォーマンスランキングです。日本株を見ても、いかに「割安」「高配当」が調子の良い1年だったかがおわかりいただけるかと思います。