この1週間、世界の目は「新たな米中対立の雲行き」に釘付けとなりました。その主役は「中国製の巨大な気球」です。アメリカの戦闘機F-22によって撃墜されましたが、腑に落ちない点が多くあります。どう考えても、今回の背後には、米中共に「緊張緩和を望まない勢力」が糸を引いているとしか思えません。(「 浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』 浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』 」浜田和幸)
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国際政治経済学者。前参議院議員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。『ヘッジファンド』『未来ビジネスを読む』等のベストセラー作家。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会委員、米戦略国際問題研究所主任研究員、米議会調査局コンサルタントを歴任。日本では数少ないフューチャリスト(未来予測家)としても知られる。
「気球」を巡って新たな米中対立へ
この1週間、世界の目は「新たな米中対立の雲行き」に釘付けとなりました。
その主役は「中国製の巨大な気球」です。
中国の内モンゴルから打ち上げられ、日本、アリューシャン列島、アラスカを経て、カナダからアメリカ本土の上空を横断し、ついに大西洋上空でアメリカの戦闘機F-22によって撃墜されました。
中国政府は「気象観測のための気球が偏西風の影響で迷い込んでしまった。不可抗力で申し訳ない」と、異例と思えるような低姿勢を見せたものです。
しかし、バイデン政権は「軍事偵察目的を秘めた気球に他ならない。領空侵犯は間違いない」と、強気の姿勢を見せました。
不可解な「撃墜」
とはいえ、ゆっくりと空中を移動する気球に対して、米軍は3億3,400万ドルもする最新鋭のF-22を飛ばし、気球を撃ち落とすために1発50万ドルもするミサイルを発射したことは腑に落ちません。
費用対効果を考えれば、こんな無駄なお金の使い方はありません。
というのも、中国政府も「軍事目的の気球ではない」と陳謝し、アメリカ軍も「物理的、軍事的な脅威とはなっていない」と説明しているからです。
しかも、ペンタゴンの説明によれば、この気球がアリューシャン列島からアラスカ上空に達した時点から、「その飛行経路を常時監視していた」と言うではありませんか。
そうであれば、ほぼ2週間の間、中国側と協議するなり、F-22などを使わず、気球を捕捉する手段もあったはずです。
米国務長官の訪中予定が消滅
問題は、米中関係を改善するために、バイデン大統領と習近平国家主席が昨年末に合意したことを受けてのブリンケン国務長官の訪中が、この気球事件によって吹っ飛んでしまったことでしょう。
そもそも、ブリンケン国務長官の3年ぶりとなる訪中の直前に、わざわざ米中関係を壊すかのように、「気象観測か、軍事偵察か」は別にして、なぜ中国は巨大な気球を飛来させたのかという点です。
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