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中国の出生率は9つの政策で倍増する?絶望的“少子高齢化”の日本より何倍もマシな理由=牧野武文

出生数を2倍に増やす9の政策

ユーワーでは、9つの政策提言をして、その効果を予測しています。

1)補助金支給、減税

高所得者には子育て減税、低所得者には現金支給をします。2人までの子どものいる人には毎月1,000元、3人以上の子どもがいる人には毎月2,000元を、子どもが20歳になるまで支給をします。また、子ども2人家庭には所得税と社会保障費を半額にし、3人以上の家庭では所得税と社会保障費をゼロにします。これで、出生数を20%増やすことができます。

2)住宅購入補助

中国でも都市部の出生率の低下が顕著です。2020年の全国の一夫婦あたりの出生率は1.3でしたが、上海は0.74、北京は0.87でした。都市の住宅価格は高騰をし、高止まりをしているため、子どもをつくりたくても、家族用の広い部屋を買うことが負担になっているのです。そこで、2人以上子どもがいる家庭には、住宅ローンの利息の50%を補助することを提案しています。これにより、出生数を20%増やすことができます。

3)託児所の増設

中国の女性の労働参加率は68.8%と高い水準が維持されています。一方で、0歳から3歳までの託児所の利用率はわずか4%で、専業主婦であるか、親と同居をして、世話ができる人が常時いる環境でないと子どもをつくらない状況になっています。そのため、0歳から3歳までの託児所利用率を50%に引き上げる政策が必要です。

そのためには少なくとも10万カ所の託児所を新設する必要があり、託児所に対して子ども一人2万元の補助を行い、安価で託児所が利用できる環境を整えることにより、ともに仕事を持っている夫婦が出産を考えるようになります。これにより、出生数を10%増やすことができます。

4)育児休暇の男女双方による取得

女性には出産、育児休暇が98日間与えられていますが、女性からはそれでは少なすぎるという不満の声があがっています。しかし、育児休暇をこれ以上延長すると、企業側が女性の採用を避ける傾向が生まれてしまいます。もし、延長をするのであれば、育児休暇期間の給与を、政府が負担するなどの政策が必要になります。

しかし、それよりは男性にも育児休暇を同程度与え、夫婦が協力をして子育てをすることが望ましいと提案しています。これにより、女性が採用に不利になるという問題も解消されます。この政策で、出生数を3%増やすことができます。

5)外国人保育士の積極導入

香港は、中国本土よりも早く少子化が社会問題となったため、2010年代から外国人保育士の導入を始めています。人口750万人の都市で、2019年には39.9万人の外国人保育士がいます。その多くはフィリピンとマレーシアです。中国でも大胆に外国人保育士を導入して、人手不足を解決する必要があるとしています。300万人規模での導入をするとこで、出生数を2%増やすことができます。

6)リモートワークの普及

旅行予約サービスの「携程」(ジエチャン、Ctrip)が、全社的なハイブリッドワーク制度を採用して話題になっています。それは「3+2」と呼ばれるもので、出社3日、在宅リモートワーク2日という働き方です。また、在宅でも勤務時間を固定するのではなく、在席か離席かをわかるようにし、要求される仕事をこなしていれば、勤務時間は自主性に任せるようにしています。これにより、仕事の合間に家事や育児ができることになり、生産性は低下するどころか、むしろあがっているケースも見られるとのことです。また、従業員の働き方に対する満足度は明らかに上昇しています。

特に子どもがいる家庭は、子育ての環境を考えて、郊外に住居を求めることが多く、通勤時間が長くなりがちです。通勤時間が不要になるというのもハイブリッドワークの優れた点です。社会的にこのようなハイブリッドワーク「3+2」方式を導入することで、出生数を4%から10%増やすことができます。

7)婚外子の権利を認める

中国の婚外子の公的な統計は存在しません。しかし、多くの人が増えていると感じています。結婚はしたくないけど、子どもはほしいという人が増えているからです。民法では「婚外子も嫡出子と同等の権利を有する。何人も危害を与えたり、差別をすることはできない」と定められていますが、現実は大きな差別にあっています。未婚の母親が産院で検査を受ける、入院するというときに、生育保険の補助を受けることができません。また、出生届を出す時も出生証明と結婚証明書を提示する必要があり、婚外子の場合は特殊な対応が必要になります。

中国社会での婚外子に対する差別意識は強くはありませんが、今まで例として少なかったため、婚外子を想定した仕組みになっていない部分が多いのです。このような扱いを改め、婚外子の権利を嫡出子と同等にすることで、女性の選択肢が増え、出生数を2%増やすことができます。

8)不妊治療技術の規制緩和

中国では不妊治療技術の多くが認められていません。例えば、人工授精や凍結卵子の利用は禁止をされています。国家の生育計画に反するという理由からです。つまり、一人っ子政策の時代に、このような不妊治療技術は「抜け道」として悪用される可能性があったため禁止をされ、その一人っ子政策が今では完全に180度転換をしているのに、規制だけがそのまま残っているのです。

特に卵子の凍結技術は、少子化に大きな効果があります。20代のうちに卵子を凍結しておき、仕事に集中をして業務を覚え、30代になって時間の余裕が生まれたら凍結した卵子を使って子づくりをするということができるからです。高齢出産のリスクを減らす可能性があり、出産に対する不安を低減することができます。すでにある程度の経済的余裕がある女性の間では、海外の医療機関を使って卵子の凍結保存を依頼しているケースも見られるようになっているため、中国でも規制を緩和すべきだとしています。これにより、出生数を2%増やすことができます。

9)教育の負担を軽減する

中国では、公立学校に通う場合でも、大きな試験が2回あります。ひとつは中考で高校入試です。もうひとつが高考で大学入試です。一般には、このような試験の1年から2年前から準備に入るため、中学2年生ぐらいから大学に入学するまでは受験勉強づけになります。学生の負担も大きいですが、それを支援する親の負担もばかになりません。そこで、中高一貫教育を進め、高校受験の負担を減らします。

また、大学では単位さえ取得をすれば、2年程度で卒業も可能にし、就職をしたり大学院に進学できる制度の導入も必要です。負担を減らし、優秀な学生は教育期間を短縮することで、教育に対する親子の負担を軽減する必要があります。これにより、出生数を10%から30%増やすことができます。

ユーワが提案する9つの政策のすべてが実施されると、出生数は144%増加し、2倍以上になる。

このユーワの提言をすべて実行し、予測される通りの効果が出たとすると、出生数は118%から144%増加することになります。つまり、倍増以上になるということです。

Next: 実際に人口は増加するのか?中長期的に注視

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