日本は夢も希望もない国になってしまい、低賃金で若者を使い捨てる制度がまかり通り、若者たちはもうこの状況を打破することができないと達観するようになってしまっている。そんな若者の前に現れ、信じられないほどの高額を支払ってくれるのが「闇バイト」なのである。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
高額の「闇バイト」で雇われた若者が事件を起こす
SNSが広がって若者の多くがSNSにつながるようになった結果、「闇バイト」がSNSで募集をかけられて、高額報酬に釣られて若者が応募するケースが広がっている。
「ルフィ強盗団」と呼ばれていた強盗事件があったが、この事件はフィリピンで逮捕されて入管収容所にいた日本人の犯罪者たちが、携帯電話を駆使して「闇バイト」で若者を雇って犯罪を繰り広げていたという前代未聞のものだった。
首謀者が日本にいないのに、携帯電話の指示だけで犯罪を次々と引き起こしていたのである。東京都狛江市の住宅で90歳の女性が強盗殺人、山口県岩国市の強盗事件、茨城県つくば市の強盗事件、千葉県市川市の強盗事件、東京都渋谷区の強盗事件、川崎市宮前区の強盗事件、さいたま市西区の強盗事件、栃木県足利市の強盗事件、東京都稲城市の強盗事件、東京都中野区の強盗事件……。
これらの事件のすべては高額の「闇バイト」で雇われた若者が、携帯電話の指示通りに犯罪を引き起こしていた。
「ルフィ強盗団」の首謀者たちは、もともとオレオレ詐欺をやっていた連中だったのだが、このオレオレ詐欺もまた「受け子」「出し子」などはSNSの闇バイトで募集される使い捨ての人員である。
この他にもドラッグの密輸などで海外から日本にドラッグを運び入れる運び屋(ドラッグ・ミュール)もまた闇バイトで募集がかけられる。
要するに、使い捨ての部分は闇バイトに募集してきた若者を使い、事件の全貌は教えずに一番リスクの高い部分を担わせて失敗したら切り捨てることができるようにしている。それが闇バイトの役割である。
若者たちが怪しい闇バイトに釣られる心理とは?
SNSで高額報酬を謳っているアカウントはいかにも怪しいものだ。信用もできない。当然のことだが、正規の雇用形態や法律に則った労働契約なんか結ぶこともないし、そもそも相手が誰なのかまったく分からない。
それでも、若者は闇バイトに釣られる。
若者が闇バイトに手を出す理由は、まずは「金」である。信用できない相手でも、驚くべき報酬を提示してくるのだ。それも、簡単そうに見える仕事で高額のバイト料を支給してくれる。
「きちんとした身なりでモノを受け取るだけのお仕事です、日給5万円」
「海外に行って帰るだけです。飛行機代・ホテル代・食費も支払います」
「日給100万円支払います。仕事内容は秘密。やる気のある方求む」
どれも怪しさ満点だ。応募しようと思う若者も「何か裏があるんだろうな、ヤバいんだろうな……」と思う。
しかし、普通のアルバイトや就職先に比べて、とにかく報酬が高い。それであれば「思い切ってやってみるか」と、生活費を稼ぐために手を出す人がいても不思議ではない。「どのみち、今のまま真面目にやっていてもどん詰まりだから」と思う。
正規のアルバイトや就職先できちんと稼ぐためには学歴や資格や即戦力になる能力が求められる。しかし、誰もがそんなものを持っているわけではない。
学校を卒業して、蹴り出されるようにして社会に飛び込んだ若者は、最初は何も持っていないことの方が多い。非正規雇用で雇われたら、低賃金・悪条件で延々と生きていかなければならない。
それならば、怪しかろうが何だろうが、闇バイトで「一発当ててみよう」と思ってしまうのである。