通信レイテンシを活用か?「レート先回り」売買の謎
インターバンク市場は、世界各国の主要な金融機関の提示するレートの集合体です。
そのレートや注文のデータもインターネットを通じて送られるので(一部例外もあります。書籍『フラッシュ・ボーイズ』に出てくるような、世界最速の専用回線を引くような連中も世の中にはいます)、レートの合成と配信にはいくらかのタイムラグがあり、通信時間による影響があります。
ニューヨークで合成されたレートは、ボストンにはすぐ到着しますがロンドンはそれより遅くなりますし、東京にはさらに遅く着きます。遅く着いたレートをみてから発注しようとしても、そのレートは誰かに既に取られていて約定しない、ということはよくあります。
日本のFX会社のサーバは大抵東京にあるので、もしヨーロッパや北米で生成されるレートを東京に着くよりも早く知り、かつ東京のサーバに発注する(ここが難しい)ことができれば、FX会社が提示するレートが切り替わる前に事前情報に基づいた発注をかけることができます。
すると、FX会社のレートが切り替わったときには既にポジションを持っている状態になるので、このレート先読みにより有利に取引をすることができます。1回の差は1pipにも満たないものでしょうが、何度も取引を繰り返す前提であればその差の累積は相当なものになります。
しかし、そこまでレートの先読みをする設備は大がかりすぎて個人が持つのは現実的ではないですし、筆者にもどのようにレートの先読みをしているのかは調査した範囲では全くわからず謎につつまれているのですが、取引履歴を見るとレートの先読みができているとしか思えない異常な勝率だった、という事例が確かにありました。
相場の世界も奥深いので、このような「何かよくわからないが、凄い」ことをしている人が、ひっそりとですが確かに生息しているのです。
最近の映画『マネー・ショート』にもありましたが、相場の世界には偏屈で世間的には目立たないが、知恵と工夫で莫大な利益を上げている人が確実にいるのです。