JR九州は不動産会社?
最後に分析するのは九州地方で事業を展開するJR九州です。セグメントの売上、利益共に不動産事業がトップです。もはや、運輸事業は主力とは考えにくいですね。
出典:銘柄スカウター
実はこの不動産事業がコロナ前(2019年3月期比)で3倍近い利益を出しています。
なぜJR九州は鉄道会社でありながら、ここまで不動産事業で大きな利益を出せるのでしょうか?
その一つの要因となるのがタワーマンションの分譲販売です。
JR九州はMJRというマンションブランドを保有しています。現在は北九州を中心にタワーマンション需要が拡大しています。JR九州は駅を保有しているわけですから、マンション事業とシナジーが高いのです。
現在MJRは九州だけでなく、神奈川県でもマンションを建設中です。全国へ展開していく場合は鉄道会社というよりも、マンションデベロッパーとして企業を考えるのも面白いと考えます。
JR4社は投資対象となり得るのか?
JR4社の特徴についてまとめます。
JR東:リートを活用した回転型ビジネスモデル
JR西:大阪駅を中心とした鉄道と不動産の2本建
JR東海:鉄道一本足打法。リニアへの投資成果は不透明
JR九州:コロナ禍で不動産事業が成長。九州タワマン需要を押さえている
ここまでを見てみると今後の成長を期待できるのは、鉄道事業に依存していない、東・西・九州のいずれかであると感じます。
しかし、JRを比較する上で忘れてはいけないポイントがあります。それは設備ビジネスであり、減価償却や修繕費などの固定費の割合が大きいこと。また古くなった機材を新しくするための投資が必要であることです。
つまり、投資分の利益を稼げているのか、を確認するためにキャッシュフローの推移を見る必要があります。
出典:銘柄スカウター
東はコロナ前は安定的にFCFがプラスであり営業CFさえ安定すれば投資を上回るキャッシュを捻出できそうです。西は東と比較すればFCFマイナスの年も目立ちます。そしてJR九州は固定資産への投資が重く、FCFはプラスになる方が珍しい状態です。
総合的に考えると、人口の多い東京近郊の不動産を持っている点やキャッシュフローの観点からJR東が最も投資対象として面白いのではないか、と考えます。
いかがでしたでしょうか?
同じJRでも企業によって大きな戦略やキャッシュフローに違いがあることが分かりますね。東海を除いて、不動産に力を入れている事が分かりました。しかしやはり本業は鉄道事業です。コロナの影響がほぼ無くなった2023年はどんな業績になるのか、今後も注目していきたいと思います。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年5月19日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。