寄付受け入れの自治体の4分の1が赤字に陥っている
なんと寄付を受ける側の自治体の4分の1が赤字となっているのです。
「ふるさと納税制度」の当初のタテマエはとっくに崩壊し、本末転倒の大バカな事態に陥っているのが実情なのです。
制度設計上から見て、大都市部の居住者が、ふるさと納税で地方に寄付するために、大都市部の自治体の税収が赤字になる――ということは、まだわかります。
しかし、現状は、寄付を受け入れる側の地方自治体までもが税収が赤字になっている――というのですから、訳の分からない事態に陥っているのです。
こんな気が狂った制度は即刻やめるべきなのです。
矛盾に満ちたヘンテコな「ふるさと納税制度」実施に固執したのは総務省官僚でなく、当時の菅義偉総務大臣の暴走だった
ふるさと納税は、制度的に人口の多い大都市部の税金が地方に流れる構図です。もとより、ここからして、不平等・不公平でおかしな制度なのです。
人口も少なく税収の乏しい地方には以前より、国から地方交付税交付金を、所得税や法人税の33.1%や酒税の50%、消費税の19.5%、タバコ税の25%、地方法人税の100%からの配分によって公平に分配されており、地方自治体間の財源の不均衡は調整されていたのです。
それなのに、何で今さらこんなことを始めたのでしょうか。
それは、第1次・安倍晋三内閣(2006年9月~07年9月)において当時初入閣した菅義偉・総務大臣(2013年以降の第2次安倍内閣では官房長官となり、のち首相)が打ち出した看板政策としての「人気取りの目玉企画」だったからでした。
犯人は、菅義偉元首相だったのです。
政治権力の私物化で身内の就職・昇進を斡旋か
この方は、横浜市議時代から、横浜市政絡みで関連のあったJR東日本の企業施設内(東京駅八重洲コンコースの一等地)に実弟の菓子店をオープンさせてやりました。
その後事業に失敗した実弟は借金棒引きの自己破産をしましたが、弟思いの兄・菅義偉氏は、JR東日本子会社の千葉ステーションビルに入社させて、やがて役員にまで昇格させた――と指弾されています。
バレバレの身内の就職斡旋・出世工作の経緯は、この1回だけではありません。
第一次安倍内閣で初入閣した総務大臣時代には、バンドマンで無職だった長男をいきなり自分の大臣秘書官に抜擢し、総務省内での人脈を築かせ、パトロン後援者のツテで総務省から許認可権限下にある放送事業会社・東北新社に入社させました。
その後の長男は部長にまで昇進します。父親・菅義偉総務大臣の政治権力の威光がなければ、ありえない話でしょう
そして、当該の東北新社は、菅氏の長男を同席させて電波枠獲得を目的に総務省幹部たちを高額接待しまくりました。
これは、国会でも問題になり、非常に醜悪な展開となったのでした。
「ありゃーやっちまったな!」というお馴染の政治家の身内の「就職&昇進斡旋」という政治権力の見事な私物化だったのです。
もちろん、この程度の政治権力の利用ぐらいは、政治家なら誰でもやっていることでしょう。ただし、公にしている言説とは真逆ゆえに見苦しいのです。菅義偉氏が折りにふれ口にしていた「既得権益の打破」どころか、自身の特権によるゴリゴリの身内びいきで政治権力を発揮していた――というわけだからです。
このあたりは、モリ・カケ・サクラでの私物化を図って大騒動となり、まんまとウヤムヤにして逃げ切った大ボスの安倍晋三元首相と、私物化の規模感はともかく、まったくの同類だったのです。もちろん、この方も親分同様に、旧統一教会との深く長い関係も知られるところです。
ともあれ、菅義偉氏は、総務大臣時代に自らの看板政策である「ふるさと納税」制度の矛盾点を指摘した官僚に対しても、容赦なく左遷するなど、人事で強権を振ったことでも官僚たちから怖れられました。
こんなヘンテコな、矛盾に満ちた「ふるさと納税制度」に固執して、制度をゴリ押ししていたのは、総務省官僚というよりも、菅義偉その人の暴走であったわけです。
もともと総務省や財務省の官僚たちは、こんな税金を弄ぶヘンテコな制度には大反対だったということが、すでに明らかになっているのですから。