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なぜ富裕層と業者だけが笑う「ふるさと納税」をやめないのか。大都市から税金流出、寄付受け入れ側でも赤字自治体が続出する闇=神樹兵輔

地方交付税不交付団体は、住民税減収分も一切補填されない

当然のことながら、人口の多い東京23区全体では、居住者が地方への「ふるさと納税」を行うため、2021年度では区民税全体の5%に相当する531億円もの税収となるはずの金額が地方に流出しています。大赤字になったのです。

ここまで流出金額が大きくなりすぎると、もはや自治体の住民サービスにまで支障をきたしかねないレベルに到っているのです。

「ふるさと納税」の税金流出で税収減となった自治体も、住民税減少分の75%は国からの交付税で補われることになっています。

しかし、大都市の自治体は財政が豊か――という理由で交付税不交付団体も少なくなく(2022年度は73団体)、東京23区などは、すべてが交付税不交付団体のために、2021年度の531億円がまるまる減収で赤字に陥っています。

ちなみに、住民税の流出金額の大きかった大都市部の自治体の赤字額は、トップが横浜市の230億円、続いて名古屋市の143億円、大阪市の123億円、川崎市の103億円(不交付団体)、東京都の世田谷区の84億円(不交付団体)、さいたま市の74億円、神戸市の70億円、札幌市の66億円、京都市の64億円、福岡市の63億円、東京都の港区の61億円(不交付団体)、千葉市の47億円……と相成っています。

一方、2021年度に「ふるさと納税」で集めた寄付金額が大きかった自治体は、紋別市(北海道)の153億円、都城市(宮崎県)の146億円、根室市(北海道)の146億円、白糠町(しらぬかちょう・北海道)の125億円、泉佐野市(大阪府)の113億円、都農町(つのちょう・宮崎県)の109億円、洲本市(すもとし・兵庫県)の78億円、敦賀市(福井県)の77億円、富士吉田市(山梨県)の72億円、飯塚市(福岡県)の66億円、焼津市(静岡県)の65億円……と続きます。

もちろん、これらの金額は「ふるさと納税制度」で集めた金額にすぎず、これらの一部しか寄付受け入れの自治体には入っていません。

結局、富裕層・金持ちが一番優遇されてトクをする制度

そもそも、ふるさと納税制度には、寄付額に限度額があります。収入や家族構成で、寄付額に制限がかかるからです。

たとえば、独身で年収400万円なら寄付限度額は、4万2,000円ぐらいです。夫婦共働きの子ども1人の場合なら、年収800万円で、11万円ぐらいです。黒毛和牛や高級海産物、温泉宿泊といった高額寄付が必要な返礼品をゲットしたい場合は、おのずと利用回数も限られます。

しかし、所得税や住民税の支払いの多い金持ちや富裕層の場合はそこが違います。

年収1,200万円で専業主婦の妻と子ども2人なら、20万円近くの寄付限度額が認められます。そして、年収1億円なら360万円ぐらいの寄付限度額が認められるので、返礼品だけで1年間の食費やちょっとした娯楽費などが賄えてしまう――というレベルが堪能できるわけです。

金持ちや富裕層ほどトクをするのが、「ふるさと納税制度」の特徴であり、金持ち・富裕層を優遇する制度にすぎないのです。

Next: 返礼品業者・広告サイトなどの周辺業者だけが儲かるバカバカしい制度

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