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資生堂、頼みの中国事業が“処理水”問題による不振で株価急落。繰り返されるチャイナリスク発動に「経営陣の能力がホタテ漁師同然」との痛烈揶揄も

化粧品メーカー「資生堂」の株価が今週に入り急落しており、13日には前週末比700円安の4,185円とストップ安水準の下落になったことが、大きな注目を集めているようだ。

資生堂は先週10日の取引終了後に、23年12月期の連結業績予想について、売上高を1兆円から9,800億円(前期比8.2%減)へ、純利益を280億円から180億円(同47.4%減)に下方修正。このことが嫌気されたとされ、株価は2017年以来約6年ぶりの安値水準に。1日で時価総額が実に2,800億円減少する格好となったようだ。

この下方修正に関して、資生堂は主に中国事業の不振によるものとしており、現地の景況感の悪化もさることながら、原発処理水の海洋放出に抗議する日本製品の買い控えも影響していると説明している。

資生堂<4911> 日足(SBI証券提供)

資生堂<4911> 日足(SBI証券提供)

いまや売上高は日本国内より中国のほうが多い資生堂

中国がいわゆる「改革開放」へと舵を切って間もない1981年に、北京市内の大型ショッピングモールなどにおいて化粧品などの販売を始めたという資生堂。

それから40年以上の年月を経るなかで、資生堂の高品質な化粧品やスキンケアは中国人女性の間で絶大な人気と信頼を得るまでにいたったわけだが、いっぽうで資生堂の側としても中国は、今では生産工場はもちろんのこと、北京や上海など複数個所の研究所も有するなど、日本国内に並ぶ重要な市場となることに。

現にここ数年における資生堂のセグメント別売上高をみていると、コロナ禍突入以降、日本市場の数字がどんどん収縮していく反面で、中国市場はいたって堅調で、直近の2021年と翌22年に至っては、日本市場の売上高を上回っているというのだ。

いうなれば、それだけ中国への“依存”が進んでいただけあって、ひとたびその国内に反日的なムードが漂ってしまえば、業績にすぐさま悪しき影響が出ることが当然考えられるところ。

ゆえに今回の資生堂株の大幅下落も、これまで何度ともなく見聞きしてきた、そんな「チャイナリスク」の典型的パターンだとする、いたって冷ややかな見方がSNS上では広がっており、なかには「経営陣の能力がホタテ漁師と変わらない」といった辛辣な声も一部からはあがっているようだ。

書き入れ時に流布された放射線絡みのフェイク情報

いっぽう、中国国内での日本製化粧品の買い控えということでいえば、今年8月の海洋放出の実施以前の6月にはすでに、中国のSNS上において「放射線の影響を受けている日本の化粧品リスト」なるフェイク情報が、広く拡散していたとのこと。

これにより、中国現地での日本ブランドに対する強い不信感が広がったというのだが、その一連の拡散があった時期というのが、奇しくも「618商戦」という中国国内でも最大級のECセールの真っ只中。

とあるマーケティング会社の分析によれば、中国でも人気が高い日本の化粧品トップブランド5社のこの時期の取引額は、前年の同時期と比較してトータルで2億元、日本円にしておよそ40億円も落ち込んだという。

さらに資生堂に限らず日本の化粧品メーカーは、中国市場での販促活動に関して現地のインフルエンサーを起用するパターンが多いのだが、これも上記のような日本ブランドへの悪評の広がりとともに、炎上リスクを避けるためもあってか、商品PRを拒否するインフルエンサーが続出した模様。

実際、今回の資生堂もこの影響もあって、SNS上などでのマーケティング活動がろくにできなかったということで、海洋放出の実施前後である7~9月におけるネット通販の売り上げは、前年同期比で2割以上減少。さらにトラベルリテール、免税品販売のほうにもその影響が及び、同じく7~9月に同1割以上減少したのだというのだ。

このように、SNSなどネット上での不買の呼びかけ、さらに悪意あるフェイク情報の流布が、如実に業績不振に繋がってしまった今回の資生堂なのだが、これを受けて同社の社長は「(処理水の影響は)24年2月の春節の頃には平常化すると想定している」と、あくまで一時的なものであるとみているよう。

ただそうはいっても、最近では韓国コスメにくわえ、以前だと“安かろう悪かろう”のイメージも強かった中国製のコスメも、このところは品質向上が目覚ましく、現地では資生堂のみならず日本製化粧品全体の優位性が薄れつつある状況だといい、中国事業の不振は必ずしも処理水の影響だけではないよう。そんななか、果たして“世の取沙汰も七十五日”ではないが、時が過ぎれば再び中国事業の回復となるのか、大いに注目されるところである。

Next: 「中国ベッタリだとこうなるってことの証左だよな」

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