株価が上がるための3つの条件
ここまでサイバーエージェントの最新決算を解説しました。
ここで、業績と株価の推移を見てみましょう。概ね営業利益と株価は同じような動きをしています。

出典:マネックス証券、株探より作成
社長の藤田氏は、決算説明会の中で「低迷する株価を上げていきたい」という発言をしました。そこで、株価を上げるために何が必要なのか(営業利益を上げるために何をしたらいいのか)、事業別に考えてみたいと思います。
<シナリオその1. インターネット広告事業:利益率改善>
広告事業はサイバーエージェントの中で最も安定している事業です。しかし、売上は成長しながらも、利益率が悪化しています。

出典:各年度決算短信より作成
先に述べたAI・DX関連の投資によって、利益率が悪化しているのですが、この投資回収を行って欲しいところです。開発したAIによって、さらなる業務効率化が行われれば、営業利益も伸びてくるはずです。
売上は5〜10%の間で成長していくものと考えられます。昨期は売上4,000億円ですから、今期が仮に4,400億円だったとします。
利益率が4.52から5.5%になれば242億円の利益、過去最高の事業利益と同水準です。
広告運用大手であり、1兆円規模の売上を誇る電通Gの利益率が約10%ですから、全く不可能な数字ではないと思います。
継続的な投資を行っているDX・AIを活用することで、利益に好影響が与えられれば良いと思います。
<シナリオその2. ゲーム事業:ウマ娘リスク収束とヒット作の出現>
ゲーム事業は、最大のリスク要因であるウマ娘の訴訟の終着が待たれます。このリスクが消失すれば、業績に影響を与えなかったとしても、株価に対して好影響だと思います。
個人的には損害賠償などで落ち着けば良いと感じます。最悪のケースはウマ娘の配信停止です。この可能性を否定できないことから、訴訟は大きなリスクとなるのです。
一方で新たなヒット作が生まれる可能性も否定できません。
とはいえ、再現性がなく博打のようなものです。今後の新作ゲームで、継続的にウマ娘級のヒットを求めることは、流石に酷だとも感じます。新たなヒット作が生まれることを祈るしかないでしょう。したがってゲーム事業の更なる成長は、自社でコントロールできる要素が少なく、運任せとも言えるでしょう。
(追記:23年11月21日、人気アニメのゲームである「呪術廻戦 ファントムパレード」がリリースされました。このゲームがアプリケーションストアの2位にランクインしたことから、23年11月22日10時現在、約5.5%株価が上昇しています。
このように、ゲーム事業はアプリをリリースしないことには、成果がわかりません。
仮に、今後呪術廻戦のゲームがヒットするとして、ゲーム事業にどのような影響を与えるのかチェックしていきたいと思います。)

サイバーエージェント<4751> 日足(SBI証券提供)
<シナリオその3. メディア事業:事業黒字化>
今回の決算解説の中で「Abema単体での黒字化はまだ時間がかかる」という話がありました。したがって、当面はWINTICKETやAbema広告など周辺事業がメディア事業を支えることになるはずです。
仮にAbema単体で黒字化を目指すならば、月額課金かPPV(有料コンテンツの配信)を伸ばすほかありません。では一体何人の月額課金ユーザーを獲得すれば、Abema単体の黒字化を目指せるのか、計算してみましょう。
(様々な前提条件をおいた上での仮説ですから、あくまで参考程度になさってください。)
22年9月期のWINTICKETの最終利益は約2億円。ここから営業利益がいくらだったのかを考えます。同年のサイバーエージェントの全体の営業利益:当期純利益=2.8:1ですから、この比率をWINTICKETにも当てはめると、営業利益は約5.6億円だったと予測できます。
同様の計算をタップルでも行うと、22年9月期の営業利益は14億円となります。
全体としては124億円の営業赤字だったため、Abema単体の赤字は約145億円であったと想像できます。これを、月額課金ユーザーで穴埋めする場合、年間で約130万人の有料登録者が必要です。
しかし、東洋経済の記事によると、有料会員数は130万人前後とされています。したがって、この仮説が正しければ、単年で黒字転換する可能性は低くはないと考えられるのです。
それでも藤田社長が「黒字化に時間がかかる」と述べる理由は、追加コストが必要であるためでしょう。具体的には、新規コンテンツの作成費などが想定されます。これは1時間作成するのに、5,000万円〜1億円のコストがかかるとされています。
とは言え、メディア事業全体で見れば、AbemaのコストをWINTICKETやタップル等の収益が上回ることが予想されます。したがって、メディア事業黒字化の道は、もう手が届くところまで来ていると考えます。
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