<要因その2:作り方が変わった>
2つ目は、作り方が変わったことです。
日本の製造業は、自前主義の垂直統合型のスタイルで世界最高性能・最高品質の工業製品を生み出してきましたが、家電製品もデジタル化に伴い、パソコンなどと同じように水平分業型が主流となりました。
アップルやグーグルが開発したソフトウェアや製品仕様に基づいて、韓国や中国などアジアのEMSが量産するという役割分担が定着したのです。自前主義や垂直統合型の物づくりにこだわる日本家電メーカーは、ここでも出遅れてしまいました。
<要因その3:製品の寿命が極端に短くなった>
3つ目は、「ムーアの法則」やデジタル化による過当競争で製品のコモディティ化が進み、価格が下がってライフサイクルが極端に短くなったことです。
家電製品は、もともと耐久財の側面が強かったのですが、デジタル家電は、耐久財というよりも消耗財の側面が強くなり、品質の高さよりも買い替え需要を促す価格帯や新製品投入の頻度が決め手になるようになりました。携帯市場でも格安携帯が普及し、中国のシャオミ(Xiaomi)やオッポ(OPPO)などの新興ブランドが一気に台頭するようになりました。
ここでも、日本メーカーの品質への過度なこだわりがコストダウンの妨げになり、なかなか切り替えができませんでした。
<要因その4:製品からメカニカルな部分が消失>
4つ目は、半導体メモリの進化によって、製品からメカニカルな部分が消失してしまったことです。
ソニーのウォークマンやカムコーダーなどでは、記録媒体にテープを使っていたような時代、メカトロニクスとも呼ばれた、メカニカルな部分を電子制御する機構を小型化することで、職人芸的な技術を磨き差別化してきました。
しかし、テープからCDやDVDなどのリムーバブルディスクへ、リムーバブルディスからハードディスクへ、ハードディスクからシリコンディスクへと移行するにつれて、その得意技を大いに発揮してきたメカトロニクス部分がほぼ消失してしまいました。半導体メモリが主流になることによって、ソニーのお家芸ともされた、誰よりも薄く小さく軽く仕上げる、という形で差別化を図ってきた製品を、誰でもが作れるようになってしまったのです。
ウォークマンにカセットテープを使っていたような時代、試作機を水を張ったバケツに沈めて、泡が出たら、まだその分小さくできるだろう、と作り直しを命じられたようなエピソードは、すっかり昔話となりました。
<要因その5:消費行動が様変わり>
5つ目は、スマホやSNSの浸透で消費行動が様変わりしたことです。
従来のマーケティング手法や広告宣伝手法が通用しにくくなり、口コミや知り合いの推薦などが消費行動に大きな影響を与えるようになりました。また、企業は、自社商品や自社に対するネガティブな情報への対応を誤ると、仮に自分たちに落ち度がなくても、たちどころに悪い噂が広まってブラック企業のレッテルを貼られるなど、消費者と企業の力関係も様変わりしました。
新たな販売手法やユーザーへのアプローチに関しては、未だ日本のメーカー各社では試行錯誤が続いている状態かと思います。