シリコンサイクルを考慮すると……
半導体には「シリコンサイクル」というものがあります。
製造を増やしたのち、需要が満たされても、投資した工場の稼働を急には止められず、供給過多になり値崩れが起こります。
儲からないので工場の稼働を止めるということになると当然、部材や製造装置も不要になるので、急に不景気が訪れます。
やがてまた半導体が足りなくなると、工場の稼働が増えて設備投資も活発になり好景気に向かっていく、という循環を繰り返すのがシリコンサイクルです。
日経平均が半導体の影響を大きく受けるということは、今はシリコンサイクルの好況の波に乗って伸びていますが、逆にシリコンサイクルが不調になった時には日経平均も大きく下がる可能性があるということです。
生成AIは素晴らしい技術ですが、それでお金を稼いでいる人がいるかというとまだその段階ではありません。
例えば、今マイクロソフトが生成AIのために半導体を大量に購入していますが、それでお金を稼げないということになると、どこかでストップすることもあり得ます。
また、生成AIはまだ「誰もが上手く使える」という段階ではなく、最終消費者においても「幻滅期」が訪れることも考えられます。
かつてのインターネットバブルの時には、「インターネットの時代が来る」といって関連企業の株価が急激に上昇したのちに幻滅期が訪れ、株価も急落しました。
しかし、いま確かにインターネットの時代は来ています。ただそれには時間がかかったということです。
したがって、いま上がっている日経平均や半導体関連銘柄に安易に投資しても良いかというと、私は懐疑的です。
日経平均4万円~5万円が当たり前の時代に?
今後、日経平均が過去最高値を更新するようなことがあっても、それが単なるPERの上昇によるものであれば、いつでもPER20倍や15倍に戻る可能性があるということを忘れないようにしましょう。
もっとも、半導体企業が利益を積み増していくということになれば日経平均も上昇していくことになり、3~5年という長い期間で考えると日経平均が4~5万円が当たり前の時代になっていることも十分に考えられます。
ただし目先に関しては、3万2,000円といったところまで下がってもおかしくないということです。
短期的には上昇しても下落してもおかしくないと言えますが、長期的に考えると基本的には上昇していくだろうと私は考えています。
投資するなら下がった時に買うべきですが、いつ下がるかはわからないので、買える時に買っておくということが一つの答えだと私は思っています。
今は円安の影響で日本株が買われている側面もあり、これが円高に振れた時には調整が入ってもおかしくありません。
しかし、本当に重要なことは世界に求められる商品を作り続けて利益を出すということであり、その点に関しては悲観する必要はないと考えています。
まとめ
日経平均が過去最高値を更新するような状況は、私たち投資家からすると待ち望んだことですが、一方でなぜ上がっているのかを冷静に見る必要もあります。
重要なことは企業がどんな付加価値を生んで、利益を出しているかということです。
目先でどんな状況になったとしても、最終的には人々の生活に貢献している企業が利益を出すことになるので、そんな企業を探すことが私たちがやるべきことということになります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2024年1月29日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。