「ナトコン」の党に変質
共和党のこの傾向は選挙のたびに強まり、現在では完全に「ナトコン」の党になったと言われている。「ナトコン」とは、「National Conservative」の略である。キリスト教徒で高卒の白人労働者層を指す。彼らは、「ラストベルト」という特定の地域に限定されているわけではなく、広く全米にいる。要するに共和党は、かつてのエスタブリッシュメントの党から、白人労働者の福音派の党に変質したのだ。
共和党の重鎮、ミッチ・マコーネル上院議員の院内総務からの引退は、共和党にエスタブリッシュメントの勢力がほとんどいなくなったことを現している。マコーネルこそ、かつてのエスタブリッシュメントの党であった共和党を代表する人物であった。
一方民主党は、共和党から移ってきたエスタブリッシュメントが右派の勢力を形成し、左派は少数民族や移民、そして高学歴の若い専門家層が形成するというアンバランスな党になった。このため右派と左派は同じ党とは思えないほど分裂し、右派左派とも受け入れ可能な、穏健で中道派の政治家がほとんどいなくなってしまった。1%の富裕層と99%の中間層、ならびに貧困層が同居した政党になってしまった。このため、議会経験の長いバイデンしか、中道派がいなかったのだ。
ちなみに、共和党を実質的に乗っ取った「ナトコン」がどういう人々なのか、もう少し見てみよう。最近、トランプの支持層を明らかにするため、「ワシントンポスト紙」が行った調査から、次のことが分かった。
<トランプ共和党の支持層>
1)支持層の年齢
・65歳以上 36%
・50歳~64歳 35%
・40歳~49歳 13%
・30歳~39歳 9%
・17歳~29歳 7%
2)政治的志向
・大変に保守的 52%
・ある程度保守的 38%
・穏健 9%
・リベラル 1%
3)学歴
・高卒者の割合が大卒者を25%上回っている。
これを見ると一目瞭然だが、トランプの共和党の支持層がよく分かる。なんと支持層の84%が、おそらく高卒の中高年だ。この人々は、まだアメリカの中間層がグローバリゼーションで解体されておらす、豊かに暮らせていた時代の記憶を強く持っている人々である。







