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トランプ圧勝「スーパーチューズデー」で深まる米国分裂の危機。共和党を支持しているのは誰か?=高島康司

アメリカで15州が一斉に投票を行い、共和党と民主党の統一候補を決定する「スーパーチューズデー」が始まった。やはりその背後で、アメリカが分裂に向かう懸念が高まっている、それをリアルに伝える。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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スーパーチューズデーのトランプ勝利と米国の分裂

この メルマガ メルマガ ではアメリカの分裂の可能性を継続的に書いているが、スーパーチューズデーでトランプが勝利したので、いまのアメリカの国内がどうなっているのか、改めて解説することにした。

スーパーチューズデーが始まった。スーパーチューズデーとは、単独の州で予備選や党員集会が行われるのではなく、共和党の場合は全米15の州で、民主党の場合は16の州で一斉に投票が行われるのがスーパーチューズデーだ。

共和党の場合は代議員総数の3分の1以上、民主党も同等の代議員数が投票で決まる。投票が行われる州は、アラバマ州、アラスカ州(共和党のみ)、アーカンソー州でも予備選が行われる。それ以外ではカリフォルニア州、コロラド州、メーン州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、バーモント州、バーニジア州だ。

トランプは、バーモント州を除く14州で勝利し、圧勝した。対立候補のヘイリーは撤退を表明したので、トランプが実質的に共和党の統一候補となるのが確実な状況だ。一方、同じく行われている民主党の予備選では、対立候補がいないので、バイデンが勝利する見込みだ。

トランプ革命党になりつつある共和党

トランプの動向や共和党の動向については日本の主要メディアでも注目され、頻繁に報道されている。しかし、トランプがなぜここまで強いのか、分かりやすい解説はされていない。2016年と2020年の大統領選挙では、グローバリゼーションの流れに乗り切れず、貧困化した米中西部、「ラストベルト」の労働者層が岩盤支持層であった。この層はもともと民主党支持であったが、2016年からトランプ支持に乗り換えたと日本では解説されている。

しかし、トランプの支持層はかつてよりも拡大している。「ラストベルト」という地域性には限定されなくなっているのだ。それというのも、共和党全体がトランプの党に変質したからだ。この変化をもっともよく現しているのが、共和党トップであったミッチ・マコーネル院内総務の役職からの引退である。これはどんな変化なのか説明しよう。

いまだに日本では、アメリカの政治は資本家を代表し、市場の合理性を尊重して小さな政府を主張する共和党と、労働者や人種的マイノリティー、さらに社会的弱者の利益を代表し、所得再配分を行う大きな政府を主張する民主党との対立で運営されていると見られている。たしかにこの構図は、南北戦争が終結した1865年から、1990年代の始めくらいまではそうであった。しかし、ブッシュ(父)政権が終わり、クリントン政権が成立した1992年頃から、徐々にではあるが、共和党は本質的に変質する道をたどった。

クリントンとブッシュ(父)の大統領選挙が行われていた1991年、大統領だったブッシュの人気はあまりなく、再選は危ぶまれる状況だった。これに危機感を感じた共和党は、新しい共和党の支持層の開拓にやっきになった。そこで彼らが目をつけたのは、キリスト教原理主義の福音派であった。福音派はアメリカで8,000万人もいるものの、彼らは大統領選挙には投票していなかった。それというのも、福音派はハルマゲドンを信じており、世界最終戦争の後、神が降臨して千年王国ができると確信しているので、現実の政治にかかわることは無意味であると考えていた
からだ。そのため福音派は、投票行動そのもに対して非常に消極的であった。

そのような福音派に目をつけたのがのが、苦戦するブッシュ陣営の共和党であった。福音派教会に接近し、大統領選挙では共和党に投票するように説得した。ハルマゲドンの条件を実現するためには、政治とかかわることが必要だと説いた。福音派は説得に応じ、雪崩を打ったように選挙に参加し、共和党候補を積極的に応援もするようになった。

しかし、聖書を字句通りに信じ、あらゆる出来事に神の働きを見る福音派の流入は、伝統的な富裕層の保守派で基本的には合理的な共和党の支持層を恐怖させた。英語には「ジーザス・フリーク(イエスの気違い)」という言葉がある。まさにその言葉にぴったり合致する人々が、いきなり現れたのだ。これに恐怖した伝統的な支持層の一部は、民主党に投票し、92年の選挙ではクリントンが圧勝した。

これ以降、民主党には米経済を代表する資本家層が中心的な支持層としして加わわった。なぜ移民の流入に許容的な有色人種や労働者の党に、資本家層が加わったのか奇妙に感じるかもしれない。だが、移民の流入は資本家層の利害に合致するのである。アメリカの企業は、労働組合の交渉力を弱め、なおかつ賃金を安く抑えることが利益を増大させるための重要なカギだと見ている。安い労働力の供給源となる移民の流入を促進すると、賃金の伸びを抑えることができるだけではなく、白人労働者との人種的な対立から、労働組合の結集力は弱くなる。これは米資本の
大きな利益となるのだ。この結果、有色人種の労働者と資本家が、同じ民主党を支持することになった。民主党は、1%(富裕層)と10%(有色人種と貧困層)の党になったといわれている。

反対に。共和党は福音派の党へと変質した。福音派の信者の多くは、白人の労働者層であった。この層の周辺には、リバタリアンや白人至上主義者、また「クークラックスクラン」、さらに「ネオナチ」のような極端なイデオロギーに許容的なグループもいた。共和党は彼らの政党になった。そして、2001年には福音派を支持基盤としたブッシュ政権が誕生した。さらに、2009年に盛り上がったティーパーティー運動などを通して福音派との関係はさらに強まり、共和党はキリスト教の白人労働者を基盤とした党に変質した。

反対に民主党には、さらに多くの資本家層が集合し、エスタブリッメントの党になった。

Next: トランプを支持しているのは誰か?ワシントンポストの調査から見えること

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